生活保護、年金支払いでは死活問題に! 公的手続き支払いのサポート体制が必要
こういうことを言うと、「障害のせいにするのか」「発達障害だからといって納税義務を怠っていいわけがない」などと反論が返ってくるが、別にADHDだからといって納税が免除されるわけではない(そもそも徳井はすでに重加算税というペナルティを払っている)。ただ、徳井を「だらしない」「ルーズ」と叱責したり、「銭ゲバ」などと的外れな批判をして社会から排除しても、なんら根本的な解決・改善につながらない、といっているのだ。
配偶者やパートナーがこうした事務作業を引き受けてくれたり、税金や公的保険の天引きなどこうした事務作業を会社に肩代わりしてもらっていれば、問題が顕在化することもないかもしれないが、周知のとおり、日本では非正規雇用が増加の一途をたどっている。人生のどこかで会社コミュニティをベースとしたセーフティネットから弾き出されることは、誰にとっても起こり得ることだ。
徳井のように納税が遅れるならまだしも、事務的な手続きや役所関係の手続きが苦手ということによって、命にかかわるケースだってある。貧困をめぐるルポなどでは、苦手意識から生活保護や虐待の相談などにアクセスできない例も報告されている。
こうしたケースでは、徳井の場合のように、税金を取り立てたい国税や税務署と違って、役所の側から積極的に捕捉しにいくわけでもない。書類がより複雑化していたり、面談で何度もダメ出しされたり、よりハードルが高いケースも多い。
しかも、以前、本サイトでも報じたことがあるが、厚労省は年金の給付年齢を引き延ばさせたいがために、詐欺的な手口まで使っている。「年金請求書」と呼ばれるハガキを出さなければ、自動的に給付引き延ばしになってしまったり、説明チャートで「受け取る年金額を増額させますか」を選択すると「今回はハガキの提出は不要です」と、給付引き延ばしを選択するように誘導されたりといった具合だ。
今後さらに手続きが複雑化すれば、年金をもらう年齢になっても手続きができないために年金を受け取れない人が続出する可能性もあるだろう。
問題は今回の徳井の件でも明らかなように、「他人事じゃない」という人と、「あり得ない」という人の認識に大きな隔たりがあること。事務作業が苦にならない人にとっては、できないということが理解できず、本人のやる気の問題、自己責任で片付けられてしまう。
また、税金の例で言えば、徳井が最終的にそうだったように国税任せにすれば税金取られ放題になってしまう。年金も払うだけ払っても受け取れないかもしれない。
その意味でも、役所の手続きが苦手、事務手続きが苦手、という問題について、どうサポートしていくかは重要な問題ではないか。
(酒井まど)
最終更新:2019.11.01 06:14