TAKUROがインタビューで語っていた「元号」を作った理由
GLAYがここまで覚悟を持って、政治的なテーマに踏み込んだのはいったいなぜか。
TAKUROは、デビュー25周年を記念して出版された『GLAY DEMOCRACY 25TH BOOK』(リットーミュージック)におさめられたインタビューで、「元号」について「ある種の『GLAYというポップミュージック』において、ああいう曲は実はすごく異色というか、本来ならば絶対必要なのかって言うと、そうではないタイプの曲ですよね」と認めながら、しかし、その矜持をこう語っている。
「まあ、50歳手前の嗜みとして、表現者の片隅にいる者としては、それこそ、好きなもんばっか食ってんじゃねえっていう(笑)。栄養のあるものも食いなさいっていう思いですよね。あれは、時々自分たちの立ち位置を見失わないように、そして『ロックミュージックってものの本質って何だろう?』って、そのことを理解しているわけではないけれども、立ち返る必要がある時には、やっぱりああいう曲は積極的に出していきますね」
GLAYの他のメンバーも同様だ。ボーカルのTERUは同じく『GLAY DEMOCRACY 25TH BOOK』のなかで「元号」についてこのようにコメントしている。
「『今、何を思っているのかを、ちゃんと正直に伝えるバンドなんじゃないかな』とは思うので。ひょっとしたら、その「元号」の歌詞ひとつひとつを見たら、また違ったとらえ方をされることもあっただろうし、TAKUROも不安だったと思うんですけど、でも「今、伝えなきゃいけないんだ」っていうその想いが、ちゃんと僕らにも伝わっていて。なので、メンバー、そしてスタッフ全員で、ちょっと強すぎる言葉があったとしても、それは責任を持って、今後も演奏していこうっていう気持ちに繋がっているんじゃないかなと思いますね」
こうしたインタビューから伝わってくるのはやはり、TAKUROやGLAYのメンバーの今の政治や社会状況に対する強い危機感だ。
芸能人やミュージシャンたちが雪崩を打って体制になびいている状況については前述したが、一方では、GLAYのように、かつては政治性とは無関係、あるいは体制的と思われていたアーティストが、声を上げるケースも出てきている。この動きがさまざまな分野に広がっていくことを祈ってやまない。
(田部祥太)
最終更新:2019.10.28 08:04