アパホームページで公開されている宮田・元谷対談
14日に閉幕した「あいちトリエンナーレ2019」。しかし、企画展「表現の不自由展・その後」について、安倍政権周辺の政治家たちが扇動した脅迫とテロ予告、そして文化庁が補助金交付を全額取り消したという“事実上の検閲”については、まったく問題は解明されていない。
とりわけ、補助金取り消しについては、誰がどう見ても、一転して不交付とした過程が不可解だ。そもそも文化庁は今年4月、あいちトリエンナーレを「文化資源活用推進事業」として採択し、約7800万円の補助金交付を内定させていた。文化庁はいまになって、申請者である愛知県が〈来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実〉を〈申告することなく採択の決定通知を受領した〉などと言っているが、後付けで理由をこねくり回したのは見え透いている。
実際、15日の参院予算員会では、立憲民主党の福山哲郎議員の質問に対し、文化庁の今里讓次長が「採択を決定した後、補助金の交付決定の審査過程において補助金を不交付決定したという例については、現時点では確認ができておらず、いまのところは見つけられておらず、ありません」と答弁した。「現時点では」などと必死ではぐらかそうとしているが、つまるところ、“文化庁が採択した補助金を一転、不交付にした”という前例は、皆無だったということだろう。今回はそれだけ“異例”の決定が行われたのである。
また、文化庁はあいちトリエンナーレを含む26件の事業に対して同時に補助金交付を採択していたが、他の25件への交付を9月20日に決定したのに対し、不可解にもあいトリだけは約1週間遅れた同26日に不交付決定を出しており、さらに、この不交付の審査をした際の議事録は存在しないというのだ。森友・加計学園問題を彷彿とさせるような“不透明な決定過程”と言わざるをえない。
文化庁が補助金採択時に審査した外部有識者に意見すら聞いていなかったことも判明している。つまりは完全な“密室”だ。採択当時、審査員の一員だった野田邦弘・鳥取大学特命教授は、抗議を込めて文化庁へ委員辞意を伝えた。メディアの取材にたいして「もう一度審査委に諮れば反対されると考えたのだろう。文化庁の説明は後付けの理屈だ」(共同通信)、「審査委などいらないというやり方。恣意的な予算執行につながり、公平性や公正性が担保できない」(新日本海新聞)、「決定が官邸主導、文科大臣の意向で進められていると感じる」(しんぶん赤旗)などと語り、行政への深い不信感を隠さない。
加えて、文化庁は〈(1)実現可能な内容になっているか、(2)事業の継続が見込まれるか、の2点において、文化庁として適正な審査を行うことができませんでした〉などと責任を愛知県に押し付けてようとしているが、現実に、「表現の不自由展・その後」は対策を経て再開し、先日、あいちトリエンナーレは過去最高の来場者数を記録したうえで閉幕した。あえて文化庁の“後出しジャンケン”に乗ったとしても、「実現可能性」と「事業継続性」は証明されたのである。
採択を覆した不交付決定の過程が極めて不審なこと、そして、文化庁が示す建前が完全に崩れていることからしても、政府はあいちトリエンナーレへの補助金交付を再考するのが筋だ。
しかし、15日の参院予算委で答弁した文化庁の宮田亮平長官は「不交付決定を見直す必要はない」と答弁。その姿勢を見直す気はまったくない。