IOC公式サイトより
2020年東京五輪のマラソンと競歩について、国際オリンピック委員会(IOC)がコースを東京から札幌に移すことを提案すると発表した。非常に妥当な判断だ。東京のあの猛暑のなか、マラソンを強行すれば、棄権者が続出。最悪、死亡者が出た可能性もある。
ところが、この期に及んでも、大会組織委員会、日本陸連関係者などは「いまさら変更は不可能」「調整が難しい」などと反対意見を口にしているらしい。東京都の小池百合子知事も16日夜の会見で「計画が唐突な形で発表された」「このような進め方については、多くの課題を残すものであります」とIOCに噛み付いた。しかも、日刊スポーツによると、「五輪の花形競技であるマラソンを東京でやらないのは、あり得ない」と発言する東京都幹部もいたという。
出場選手の生命の危機さえ指摘されている状況で、こいつらはいったい何を言っているのか。きょうの『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)で玉川徹氏が「たぶん日本て1回こうやると決めちゃうと、あとで不都合が生じても目をつぶっちゃうところがある。これもう戦争で負けたときとまったく一緒」と語っていたが、本当にその通りだろう。
というか、そもそも、こんな事態になったのは、東京五輪招致委員会が招致の際に嘘をついたせいなのだ。オリンピック招致の際に作成した「立候補ファイル(日本語版)」にはこんな記述があった。
〈この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である〉
あの猛暑のなかで開催するというのに、「温暖」「理想的」とは信じられないが、大会組織委や東京都は招致決定後も、危険性を散々指摘されながら、この嘘を貫き通し、根本的な解決策も、まったく講じなかった。その結果、上部団体のIOCに札幌開催を提案されてしまったのである。
本サイトはかなり早い段階から、この酷暑問題を取り上げ、招致委員会がついた様々な嘘を指摘してきた。そして、「打ち水で酷暑対策」などと非科学的な安全神話を吐く政府、「五輪の酷暑を心配する人は反安倍」などとレッテル貼りをして批判を封じ込めようとする元陸上日本代表・為末大氏ら五輪応援団のおかしさを指摘してきた。
ここにその記事の一つを再録するので、ぜひ読んでほしい。そもそも、五輪招致自体が嘘で塗り固められたものだったことがよくわかるはずだ。
(編集部)
●東京五輪“酷暑”問題で政府は「打ち水で対策」、為末大は「苦情はNBCに」
日本列島は連日猛暑に見舞われている。18日に総務省消防庁が発表した速報値によると、7月9日から15日まで間に、熱中症で救急搬送された人数は全国で9956人にのぼり、搬送された患者のうち12人が死亡したという。この暑さはこれからもまだまだ続く予報で、引き続き熱中症への警戒が呼びかけられている。
この暑さを受けて思いを馳せずにはいられないのが、2020年東京オリンピックのことだ。東京オリンピックは20年の7月24日から8月9日にかけて行われる予定であり(パラリンピックは8月25日から9月6日まで)、命の危険すらある酷暑のなかで開かれるからだ。1964年に行われた前回の東京オリンピックは10月10日から10月24日にかけて行われたもので、今回の大会とは状況がまったく違う。
当然、巷間やSNSには酷暑開催となる2年後のオリンピック開催を憂う声が溢れているわけだが、そんななか、暑さや熱中症対策として国が出している対策はあまりにもこころもとない。
国土交通省は2015年から複数回にわたり有識者会議を開き、オリンピック期間中の暑さ対策について話し合ってきたが、その結果として導き出された答えは、〈有識者会議は、打ち水のほか、浴衣、よしずの活用など日本ならではの対策を盛り込み、観光PRにも生かしたい考えだ〉(15年4月17日付ニュースサイトYOMIURI ONLINE)だったのである。
21世紀に導き出された結論とは到底思えぬ、戦時中の竹槍訓練を彷彿とさせる冗談のような熱中症対策には、もはやため息も出ない。そんななか、日増しに高まる世間からの熱中症への危惧に対して、陸上の元日本代表選手である為末大氏はこのようにツイートした。
〈みんなこんなに暑くて大変なこの時期にオリンピックをやるなんてオリパラ委員会は何をやってるんだと言うけれど、アメリカのプロスポーツの間を縫うためにあそこしかできないのが本当のところだと思うので、苦情はNBCとかIOCに伝えた方がいいと思う〉
NBCはアメリカの3大ネットワークのひとつ。確かに、為末氏が指摘する通り、夏期オリンピックがこの時期に開催されるのは、アメリカのテレビ局の「夏枯れ」対策によるものである。
しかし、だからといって〈苦情はNBCとかIOCに伝えた方がいいと思う〉というのはまったく正しくない。というのも、日本側は、7月から8月の間に開催する日程でないと東京にオリンピックは呼べないと認識したうえでオリンピック招致を進め、しかも、この時期の東京が野外で激しい運動をできるような気候でないことを隠して招致を強引に押し進めたからである。