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「ノーベル賞は日本人ではありませんでした」報道で露呈した日本の“精神的鎖国” 文化も科学もスポーツも「日本スゴイ」に回収

安倍政権が牽引する偏狭な愛国主義の空気のなか、“精神的鎖国”が進む日本

 英国在住のコラムニストであるブレイディみかこ氏は、最近、ウェブサイト「Wezzy」のインタビューで、日本社会と国際社会との“ズレ”をこう語っていた。

「昔、イギリスの新聞社の駐在員事務所でアシスタントをしていたとき、同僚に日本好きでしょっちゅう日本に旅行しているような男性がいたんです。彼とはいまもつきあいがあって、数年前に話したとき、『日本に行ったら空港に中国や韓国のことを悪く書いたタイトルの本が置いてあった』と言ってたのであまりにシュールで不謹慎ながらつい笑ってしまったことがあります。『日本はまた鎖国すんのか!?』って」(10月8日「日本が直面する排外主義、格差社会。絶望せず未来へ進むためのヒント/ブレイディみかこさんインタビュー」)

 インタビュアーが「音楽・映画・文学などの海外の文化がどんどん受容されなくなっている傾向も感じます」と言うと、ブレイディみかこ氏も「それは私もすごい感じます」と同調する。

「海外から入ってくるものを聴いたり、見たり、読んだりして影響を受けることって大事じゃないですか。それは、海外にかぶれろって意味ではなく。『ここじゃない世界がある』っていうことは、すごくいろんな人を勇気づける。特に、いまがつらい人。生きていると、ここじゃない世界がどこかにあると思うからやっていける瞬間ってありますよね」
「そのためにも外からの情報って大事だと思うんです。でも、外からの情報がなくなったり、興味がない人が増えたりすると、そもそも翻訳がなかなか出なくなったりする。1980年代とかだと海外の本もすぐ翻訳されましたよね。でも、いまは違う。多分、『貧困化する』ってそういうことなんですよ。いまの日本を見ていると、国が衰退していっているのを見ている気がします」(同上)

 安倍政権が牽引する偏狭な愛国主義の空気のなかで“精神的鎖国”が進行し、メディアは「日本スゴイ!バンザイ!」と自己暗示をかけるばかりで、外でなにが起きているかを伝えず、受け手も見ようとしなくなった。その結果、差別や排外主義が勢いを増しただけでなく、「文化後進国」であることを恥じる感覚が麻痺し、科学技術やハイテク分野で遅れをとっている事実すら直視しなくなってしまった。

 今回の〈ノーベル文学賞は外国人に〉という共同通信の速報は、まさに自らの慰撫にふけって、世界から完全に取り残されていることの象徴的出来事だったように思えてならない。せめてもの救いは、こういった見出しや報じ方に少なからぬ人々が拒絶反応を見せたことだが、かたやネトウヨたちはこの時期になると、何かと「日本人」と「韓国人」「中国人」の受賞者数を比べて悦に入る。別に自分が受賞したわけでもないのに、だ。

 メディアは大衆の欲望を反映させる。だからこそ、その欲望がいかに爛れているか、自覚を促さねばならない。ノーベル賞ですら「日本スゴイ」の文脈でのみ消費することの、いったい何が「スゴイ」のだろう。側から見れば「キモイ」だけだ。

最終更新:2019.10.12 02:07

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