被害女性をバッシングするカウンターは矛盾だらけの恣意的情報
実は「週刊文春」「週刊新潮」両誌にも、これと同内容のカウンター情報が掲載されていた。
たとえば、森アナへのセクハラについて、「週刊新潮」では「桐永氏をよく知る関係者」が、「森アナから“私桐永さんみたいな身体の大きい人が好きなんです”と言われて勘違いした」「彼女は(酔って)フラフラで放っておけなかった」「マンションの前まで行ったら、彼女から抱きついてきたので、それに応えるようにキスをしてしまった」という反論をしている。
しかし、「女性は酔っていた」「女性のほうから誘ってきた」という情報は、性暴力の加害男性の言い訳の典型だし、森アナはお酒に強く、当日もほとんど酔ってなかったという。しかも、桐永氏がCPになって『報ステ』に抜擢されたアナウンサーで、わざわざ嘘をついて桐永氏を陥れる理由がない。
また「週刊文春」は、『報ステ』に古舘伊知郎時代のCPで、政権批判や原発問題に取り組んできた松原文枝氏を慕う勢力が残っており、桐永氏が松原一派に「刺された」と周辺に漏らしたとの情報を書いていたが、これもまったく為にするものだ。
というのも、今回、セクハラをコンプライアンス室に告発した女性は前述した森アナはじめ、桐永氏がCPになってから抜擢したスタッフや、桐永氏の『グッド!モーニング』時代のスタッフが大半を占め、彼女たちは松原氏とまったく関係ない。
また、「週刊文春」も「週刊新潮」も参院選報道で静岡選挙区をめぐる菅義偉官房長官の動きを取材したVTRを、桐永氏が放送予定当日、「こんなものが放送できるか」とお蔵入りさせたことを報じており、この件を担当していたのがセクハラ被害を告発した女性たちの一人だったことを意味深に紹介していた。
たしかに、桐永氏が官邸に怯えて参院選静岡選挙区をめぐるVTRをお蔵入りさせたのは事実で、これはこれで大問題だが、セクハラ告発とは何の関係もない。なぜなら、セクハラがコンプライアンス委員会に告発されたのは7月はじめ参院選公示の直前で、VTRのお蔵入りトラブルの起きる2週間も前のことだからだ。
ようするに、こうした情報を流している連中は、桐永氏を守って、上層部への責任追及をそらし、逆に、安倍忖度に抵抗している『報ステ』の良識あるスタッフたちをこのセクハラ騒動を利用して攻撃しているのだ。いったい誰がそれを仕掛けているかは明白だろう。
それにしても、自分の番組に起用している女性アナウンサーに無理やりキスをし、10人以上の女性へのセクハラが発覚したチーフプロデューサーがたった3日間の謹慎で済まされ、逆に告発した女性たちへのバッシング情報が流される。いったいこの放送局はどうなっているのか。
こんなことでは、桐永氏が交代しても、『報ステ』がかつてのジャーナリズムを取り戻せるとはとても思えないのである。
(編集部)
最終更新:2019.09.07 11:59