重度の障害を持つ木村議員の主張に小倉智昭や古市憲寿までが賛意
だが、こうしたグロテスクなネットや政治の状況の一方で、意外なメディアがれいわの議員の活動に真正面から向き合い、その意義を正当に評価した。
それは、30日放送の『とくダネ!』(フジテレビ)だ。同番組には、れいわ代表の山本太郎氏とともに木村議員がスタジオ生出演。さらに、舩後議員も、生中継でスタジオからのインタビューを受けた。
このなかで、初登院を控えた今の気持ちを聞かれた木村議員は「重度訪問介護を使って、日頃介護を受けながら生活をしているんですけれども、それがその就労が認められないということで、本当に国会に8月1日に入れるのかというのが、今とても不安です」と率直な心境を吐露。また、MCの小倉智昭が「要は国会に突貫工事でスロープだけ作ってもしょうがないってことですよね」と話すと、「そうですね。介護者がいないとお水も飲めないので、そういう意味では介護者は私のパートナーですから、ぜひ介護者とともに、国会に入りたいと思っています」と述べた。
重度の障害をもつ木村議員が、自分の感じていることを、フィルターを通さずに理路整然とメディアで表現する。あえて言うが、その姿は、これまでテレビマスコミが、視聴者の涙と同情を誘うため、紋切り型の「かわいそうな人」として演出してきた“重度障害者のイメージ”とは、確実に異なるものだ。
実際、その姿は、明らかにスタジオの共演者たちを動かしていた。たとえば、小倉から「何で経済活動には介護の人がついてはいけないのか。古市くん、そのへんってわかる?」とふられたコメンテーターの古市憲寿氏も、「これ国会だけじゃなくて、働きたい、働く障害者に関わることだと思うんですよ。だから、それで、今回はすごい意味あるなぁと思ったんですけども」とまっとうなコメントをしていた。古市といえば、今年1月に落合陽一との対談での“高齢者の終末期医療打ち切れ”発言が大炎上したが、まるでそのことを感じさせないような発言ではないか。
ほかにも小倉と古市は、木村議員が街の声を受けて「税金を多く使っているなんていうイメージがあると思うんですけど、ただ私たちはやっぱり障害があって、介護者がいれば、働きたいという気持ちは皆さん持っていると思うんですね。健常者の方だって働いて生活してますから」と話したのを受けて、感慨深げにこう述べていた。
小倉「弱者に国の予算を多くさける国ほど、僕は民主国家だっていう風に思うのね。なんか最近の若い人って、民主国家、民主主義を勘違いして多数決だからとか言うじゃないですか、でも少数意見を重要視して弱者を救っていかないと、古市くん、僕は本当に民主国家じゃないと思うんですよ」
古市「そうですよね。どんな状況に生まれても、どんな親元に生まれても、本当に好きなことができた方が、たぶんいいと思うんですよ。障害を持っていたからといって、自分から障害者になりたいといってなったわけじゃなくて。たまたまそういう状況に、今、あるだけであって。だからどんな状況である人もやりたいと思ったことだった方がいいし。逆にみんなが働ける、働きたい方が働ける社会の方が、社会でとっても、税収の面からいってもいいことはたくさんあると思うんですよね」
小倉や古市からこうしたコメントが出てきたのは、まさに木村議員の存在があってこそだが、さらに『とくダネ!』で特筆すべきは、舩後議員がコミュニケーションをはかる様子をしっかりと生放送したことだろう。
ALS(筋萎縮性側索硬化症)により、舌や喉も含め全身の筋肉を動かすことのできない舩後議員は、介助者が示す文字盤に目の動きで合図を送ることで言葉にする。
スタジオのアナウンサーが「舩後さん、改めてなんですが、一番国会で訴えたいことはどんなことでしょうか?」と尋ねたときのこと。介助者が文字盤の文字をひとつひとつ指で示しながら、舩後議員の言葉を確認しようとするのだが、「じ・ゆ・う」まで読み取ったところで目の動きがわかなくなったのか、言葉が止まる。介助者は「最初からやり直します」と数回繰り返し、舩後議員に声をかけて確認しながら、時間をかけて「重度訪問」という言葉にたどり着いた。