年金制度をまったく理解していないホリエモンの「税金泥棒」発言
ここまでくると、頭が悪すぎて絶句するしかない。「納税してる額より給付されてる額のほうが多い」って、この男、年金制度では、税金と別に保険料(掛け金)を徴収されていることを知らないのか。しかも、30年以上にわたる物価や賃金の変動、そして富の再配分という考え方からすれば、給付金が低所得者だけでなく、平均的な所得層の保険料や納税額を上回るのは当たり前で、いま、それが崩れているから問題になっているのではないか。
実際、若い頃は年金保険料が安かった1960年生まれの人(来年60歳)でも、生涯の保険料負担は約1600万円。そして、納税額は、年収の低い中小企業のサラリーマンでも、消費税、酒税などをあわせれば2000万円を超える。低く見積もっても、合計3600万円になるのだ。一方、2017年度末現在の厚生年金の平均年金月額は約14万7千円だから、1960年生まれの人が男性の平均余命83歳10カ月まで生きても、給付総額はせいぜい3500万円程度にしかならない。しかも、年齢が若くなるにつれて、どんどん給付が低くなり、保険料はさらに高くなる。最悪の場合、年金制度が破綻して、給付をほとんどもらえない可能性だってゼロではない。
こうした事実を今回、政府が金融庁の報告書というかたちで認めてしまったため、国民の間で怒りと不安が改めて吹き出したのだ。
これのどこが「税金泥棒」だというのか。ようするに、堀江は年金の基本知識や今回の問題の背景をまったく知らないで、的外れな悪口を喚いているだけなのである。まったく、偉そうに吹かす前に義務教育からやり直したほうがいいと思うが、多くの批判を受けた堀江は、性懲りもなく今度はこうツイートした。
〈年金デモに参加してる奴は年金の仕組みなんか理解してないだろうが今更批判してどーする?って感じだ。最初の頃の設計ミスっててさらにそれを政治家とかが利益誘導してグリーンピアとかで運用して大失敗したのを何とか立て直しつつあるのが現状だ。〉
だから、年金の仕組みを知らないのはお前のほうだって(笑)。後になって、「グリーンピア」とか言い出してるが、付け焼き刃で勉強したのがミエミエ。だから、「何とか立て直しつつあるのが現状だ」なんてことが平気で言えるのだ。
現在の年金制度は「立て直し」どころか、今回、金融庁や厚労省が示した以上に悪化していることは、高校生でも知っている。
19日の党首討論でも国民民主党の玉木雄一郎代表が指摘していたが、2014年の財政検証のシミュレーションに2017年の全要素生産性を当てはめれば「36年後に積立金が枯渇する」結果になるのだ。堀江はGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による年金運用も〈運用益かなり上がってる〉などと評価していたが、そんなものはこの数年、たまたま世界的な好況に助けられただけにすぎない。すでに、2018年10~12月期の運用実績で14.8兆円の損失を出したことが明らかになったが、これから景気後退でさらなる損失が見込まれている。
言っておくが、「年金デモ」は、高齢者が自分たちの年金をアップしろと叫んだのでもなければ、保険料を下げろと要求したわけでもない(それを主張してもまったく問題ないが)。こうした年金の根本的な問題点から目を背けて、その場しのぎでないものにしようとする政権に対し、真剣に向き合って、抜本的な解決をせよ、と訴えているのだ。