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安倍政権の選挙狙い「就職氷河期世代」支援が酷い!「人生再設計世代」と言い換え、劣悪労働押し付け、派遣会社への利益誘導も

『わたし、定時で帰ります。』の原作者も言い換えを批判、〈就職氷河期は災禍〉

 政治の責任が「自己責任」の言葉で転嫁され、「就職氷河期世代」は社員と同じ仕事をしても賃金を抑えられ同等の社会保障も受けられず、雇用の調整弁として使い捨てられ、少なくない人びとが生活の不安から結婚したくてもできない、子どもをつくりたくてもつくれないという人生を余儀なくされた。にもかかわらず、その問題にメスを入れると言いながら、正規社員化促進のための雇用ルールの見直しや、正社員と非正規の給与格差の是正・処遇改善といった抜本的な問題には着手しないのである。

 それも当然だろう。そもそも、今回の支援の提言をおこなった民間議員のひとりは、経団連のトップである中西宏明会長だ。日本の最低賃金は先進国のなかでも最低水準にあるが、5月20日におこなわれた定例会見で中西会長は「ここ何年か最低賃金を上げ続け、限界だという声もある」などと述べたばかり。一方、中西会長が取締役会長を務める日立製作所は、2018年3月期のデータによる1億円以上の報酬を受け取る役員数ランキングで2位であり、中西会長の報酬額は2億4300万円にものぼる(しんぶん赤旗2018年7月1日付)。

 安い賃金で労働者を使い捨てる一方で役員報酬を増やしてきた「就職氷河期世代」を食い物にする構造そのものを地でゆく経営者である中西会長が自分たちの損になるような支援策を打ち出すはずがあるまい。そして、そうした経団連の支持を受ける安倍首相には、経済界の意向に逆らうような抜本的改革をおこなう意思などハナからないのだ。

 実際、ここにきて安倍首相が「就職氷河期世代」の付け焼き刃的支援策を打ち出したのも、格差社会にあえぐ非正規労働者を少しでも救済しようという話ではない。参院選を控えて、お得意の「やってる感」の演出をするためだ。

 たとえば、朝日新聞は〈今回の支援策をまとめるきっかけは、3月27日の経済財政諮問会議で安倍晋三首相から「国を挙げて力強く支援していく必要がある」と指示を受けたこと〉だとし、〈実質2カ月でまとめた急ごしらえの対策は、実施中の施策もかき集めてパッケージにしたもの〉にすぎないと指摘。〈夏の参院選を前に、野党が訴えそうな施策を先取りする思惑が透ける〉と伝えている。

 さんざん食い物にしてきた挙げ句、選挙のためのPRとして本気でもない支援策を打ち出す──。どこまでバカにすれば気が済むのかと思うほかないが、だからこそ、「人生再設計第一世代」などというふざけたネーミングの提唱などが出てくるのだ。

 安倍政権による言い換えを批判した前出の『わたし、定時で帰ります。』原作者・朱野帰子氏は同記事で、〈就職氷河期も、あれも災禍だったのではないか〉とし、こんな意見も綴っている。

〈これからは氷河期世代の思いがもっと吐き出されるべきだと思います。他の世代を攻撃するためではなく、なかったことにされないために、自分は努力不足などではなかったのだ、と思えるようになるために。〉

 選挙前の自己宣伝のための、その場しのぎの支援策などいらない。むしろこの選挙でこそ「不当な格差政策をやめろ」と声をあげなければ、「自己責任」を押し付けられたまま、安倍政権に都合良く利用されつづけることになるだろう。

最終更新:2019.06.01 12:25

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