安倍政権の「老後は国に頼るな、自助努力しろ」というグロテスクな本音
事実、安倍政権のそうした「国に頼るな」「自己責任」という本音、本質を端的に表しているのが、2013年に成立させた社会保障改革プログラム法だ。
この法律は、年金をはじめ医療や介護、福祉といった社会保障費削減のための工程を定めたものだが、安倍政権は「講ずべき社会保障制度改革の措置」として、〈個人がその自助努力を喚起される仕組み〉の導入を掲げ、第2条の2でこう規定している。
〈政府は、住民相互の助け合いの重要性を認識し、自助・自立のための環境整備等の推進を図るものとする〉
社会保障制度改革の基本は、「自助・自立のための環境整備」である──。しかも、じつは社会保障制度改革国民会議がまとめた最後の報告書では〈自助・共助・公助の最適な組合せに留意して形成すべき〉という文言があったのだが、それが法案では「公助」が消え失せ、「自助・自立」が前面に押し出されたのだ。
憲法25条では〈すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する〉と謳われ、〈国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない〉と定められている。しかし、憲法によって規定された社会保障に対する国の責任を放棄して、安倍政権は「自分のことは自分でどうにかしろ」と国民に押し付けたのである。
この条項を見れば、今回露呈した「年金に頼るな」「長生きしたいなら2000万円貯金しろ」「投資で資産運用しろ」というものは、安倍政権の年金に対する姿勢を端的に表したものであることがよくわかるというものだ。
無論、安倍政権は国民の生活を守るための年金制度が破綻しないように抜本的改革をおこなう気などさらさらなく、給付金の削減や保険料などの負担増といった国民の生活を追い込む手しか打たない。その上、安倍首相は「人生百年時代の到来は大きなチャンス」などと宣い、最近も70歳まで働けるようにする「高年齢者雇用安定法改正案」の骨子を発表したばかり。政府は年金支給開始年齢は引き上げないとしているが、こうした雇用年齢の引き上げによって、いずれ年給支給開始年齢も現行の65歳から70歳、さらに75歳……と上げていく算段なのは目に見えている。
「年金に頼るな」と責任を投げ捨て、高齢者に「死ぬまで働け」と要求し、老後の貯蓄のために投資などする余裕がない国民には目も向けない。──もはや安倍政権の社会保障政策は、すでに破綻している。そう言っていいだろう。
(編集部)
最終更新:2019.05.30 12:49