担当編集者の個人的判断とは思えない津原氏への圧力と出版中止決定
実は、この表現の自由の侵害行為こそ、今回の騒動のもっとも大きな問題なのだが、見城氏や幻冬舎はそのことにいまもまだ謝罪していないのだ。
圧力の事実がなかったわけではない。見城社長は、当初、〈こちらからは文庫化停止は一度も申し上げておりません。担当者はずっと沈黙していましたが、あまりのツイートの酷さに「これでは私が困ります」と申し上げたところ「それでは袂を分かちましょう」と言われ、全く平和裡に袂を分かったのが経緯です〉などとツイートしていた。
しかし、津原氏は本サイトの取材やツイッターで反論。担当編集者から1月8日に突然、連絡を受け、津原氏のツイッター上の『日本国紀』批判が社内で問題になっていることを知らされ、誰が文句を言っているのか迫ると、担当は「営業部長」であると答えたことなどを明かしている。そして、その担当から同日、送られてきた〈会社に来て、いろいろ考えてみましたが、『ヒッキーヒッキーシェイク』を幻冬舎文庫に入れさせていただくことについて、諦めざるを得ないと思いました〉という、事実上の出版中止通達のメールを公開している。
いずれにしても、幻冬舎側が『日本国紀』批判を止めるよう津原氏に要求し、津原氏がそれに応じなかったため、出版中止に至ったたというのは紛れもない事実だ。
しかも、見城社長は「担当編集者が」などと責任を押しつけているが、もちろん担当編集者個人の判断などでないことは明らかだ。幻冬舎の説明によれば、文庫本出版中止にあたっては、それまでにかかった制作費を幻冬舎が負担し、他社から文庫化された場合のロイヤリティも放棄したという。こんな自社に不利益をもたらす決済を担当編集者だけでできるはずがないだろう。
今回の津原氏の文庫本出版中止は、当たり前だが幻冬舎という組織の意思だ。強い発言力をもった誰かが担当編集者に「津原氏の『日本国紀』批判を止めさせろ」と迫り、出版中止もその人物が判断していると考えるべきだろう。