マイノリティ差別の防止ではなく“その場しのぎ”のゴマカシ対応を推奨
そして、極めつきが3項目の「タイトルに使われやすい「強めのワード」に注意」だ。ここでは〈表現が強くなる傾向〉があるパターンを紹介して〈自らの発言をコントロールしていくことが大切〉とし、以下の5つを挙げている。
〈【パターン1】歴史認識、政治信条に関する個人的見解⇒謝罪もできず長期化の傾向
【パターン2】ジェンダー(性差)・LGBTについての個人的見解
【パターン3】事故や災害に関し配慮に欠ける発言
【パターン4】病気や老いに関する発言
【パターン5】気心知れた身内と話すような、わかりやすく、ウケも狙える雑談口調の表現〉
呆れてものも言えないとはこのことだろう。ようするに、杉田水脈議員の「LGBTは『生産性』がない」も、麻生財務相の「飲み倒して運動も全然しない(で病気になった)人の医療費を、健康に努力している俺が払うのはあほらしくてやってられんと言っていた先輩がいた。良いことを言うなと思った」も、辞任した松本文明・内閣府副大臣の「それで何人死んだんだ」や、今村雅弘・復興相の「まだ東北で、あっちのほうだったから良かった」、桜田五輪相の「復興以上に大事なのは議員」も、自民党はすべて「強めのワードだったからよくない」と言っているのだ。しかも、「歴史認識」「政治信条」=歴史修正主義については「謝罪できない」問題だと開き直り、“思っていてもほどほどにしておけ”とでもいうニュアンスを漂わせている。
つまり、この“失言防止マニュアル”は、そもそも暴言が出る要因である弱者・マイノリティに対する差別意識や人権感覚、防災や復興を担う立場であるという責任意識の欠如を問題視すべきなのに、そうした政治家として当然もちあわせるべき知性、感受性、想像力の獲得や自覚などを促すでもなく、「発言は切り取られる」「言葉遣いに気を配ろう」「強いワードに注意」などとその場しのぎの対応しか打ち出していないのである。