6つの官製ファンドが損失抱える状態、アベノミクス成長戦略の失敗例が続々
いや、そもそも「アベノミクスの失敗」はこれだけではない。安倍首相は第二次政権発足後から官製ファンドの新設と拡大を打ち出してきたが、昨年4月には会計検査院が14あるうち6のファンドが損失を抱えた状態にあるとして問題視。産業革新機構についても、その実態は経営破綻寸前の大企業の再建にジャブジャブと公金を垂れ流すもので、今回のジャパンディスプレイにとどまらず、安倍政権が掲げた「クールジャパン政策」の名の下に数十億円の公金もドブに捨てた。
それは、100パーセント株主として出資した官製映画会社・All Nippon Entertainment Works(ANEW)をめぐる問題だ。同社は「日本国内コンテンツのハリウッド・リメイクを共同プロデュース」を謳ってアニメ作品や映画などを米国で実写化することを目的としていたのだが、そのほとんどが事実上の企画倒れになる一方で、莫大な赤字を垂れ流していたが、産業革新機構は2011年から2014年にかけて、少なくとも約22億円を拠出。ところが結局、2017年5月にはANEWを二束三文で民間に売却したのだ。
その上、産業革新機構から改組された産業革新投資機構(旧革新はINCJとして子会社化)では、昨年末、田中正明社長(三菱UFJFG副社長)をはじめとする民間の取締役9人全員が辞任。当初は幹部らへの高額報酬問題がクローズアップされたが、田中社長の辞任会見ではそれ以上に「官民ファンド」の在り方をめぐる政府方針との対立が露わになった。
実際、田中社長の辞任会見の際、社外取締役だった星岳雄・スタンフォード大学教授は、このようなコメントを発表した。
「私の研究でよく知られているものの一つに、ゾンビ企業の研究があります。業績が悪いために正常な競争状態では市場から淘汰されるべき企業を、政府などが救済するなら、新規参入は阻害され、優良企業の拡大を妨げられ、全体の経済成長は低下してしまう、というものです。産業革新投資機構が、ゾンビの救済機関になろうとしている時に、私が社外取締役に留まる理由はありません」
そして今回、ゾンビ企業の救済策として公的資金が投入されてきたジャパンディスプレイの中台企業連合への傘下入りによってまたも決定的となった「アベノミクスの失敗」──。統計不正問題では「アベノミクス偽装」があきらかになり、さらに5月発表のGDP(1〜3月期)や7月発表の日銀短観ではかなり厳しい数字が出ることが予想されているが、それでも安倍首相はアベノミクスを正当化しつづけるだろう。しかし、それは「虚構」だということに、一刻も早く国民が気付かなくてはならないのだ。
(編集部)
最終更新:2019.04.24 01:38