東京電力ホールディングスHPより
今月1日、外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法が施行されたが、本日、驚くべきニュースが報じられた。東京電力ホールディングスが、福島第一原発の廃炉作業などに新たな在留資格である「特定技能」の外国人労働者を受け入れる方針を示したのだ。
これまでの外国人技能実習制度では、廃炉作業は「一般的に海外で発生しうるものではない」として受け入れは認められていなかった。だが、東電の方針を本日の朝刊でいち早くスッパ抜いた朝日新聞の記事によると、東電が特定技能について法務省に問い合わせた結果、「新資格は受け入れ可能。日本人が働いている場所は分け隔てなく働いてもらうことができる」(東電広報担当)と判断したのだという。
この決定の背景には「深刻な人手不足」があると言うが、その大きな要因のひとつとなっているのは、東京五輪開催に伴い建設業界などを中心に人手が取られているということ。復興や廃炉作業の足を引っ張っておいて「復興五輪」と安倍首相はよく言えたものだ。
そしてもうひとつは、原発作業員に対する給与の“ピンハネ”の横行だ。多重下請け構造のなかで、違法な雇用契約、複数の会社による中間搾取によって日当や危険手当がきちんと払われていないという事例は数多く、危険と隣り合わせの作業を余儀なくされるにもかかわらず劣悪な労働環境が指摘されてきた。
こうした原発作業員をめぐる状況を改善するのではなく、外国人労働者に押し付ける──。安倍首相は外国人労働者受け入れ拡大の改正案審議の際に「外国人材のみなさんは人間として受け入れる」と明言したが、さんざん懸念が示されてきたように、結局、実態は「安く使い倒せる労働力」として扱おうというのだ。これは、まさしく“奴隷労働”ではないか。
しかも、原発作業員として外国人労働者を受け入れることで、労働環境の劣悪さが助長させることは目に見えている。
たとえば、昨年、外国人技能実習生に除染作業をさせていたことが判明したが、このとき監理団体は技能実習生に「仕事は簡単」「誰でも出来る」としか説明していなかったという。一方、特定技能1号では、「日本語基礎テスト」または「日本語能力試験」で5段階のうち4番目にやさしいレベルの「N4」(ややゆっくりの会話であれば、ほぼ理解できるレベル)での合格が必要となるが、廃炉という危険が伴う作業についてしっかり意思疎通をはかることが現場で徹底されるのか。技能実習生の除染作業従事問題の一例をとっても不安しかないだろう。
何より問題なのは、被曝線量の把握だ。国外の原発で働いて被曝した場合、被曝線量は労働者が自己申告しなければならないというが、今朝の朝日新聞では、廃炉作業に従事し『福島原発作業員の記』の著者でもある池田実さんが「日本人ですら、被曝による労災申請の方法はよく分からず、ためらう。外国人ではなおさらではないか」と懸念を示している。