大阪W選挙より辺野古の住民投票のほうが奇策と言い放ち、朝日新聞批判
橋下氏はその上、悪質なことに、昨年の沖縄での辺野古新基地建設をめぐる住民投票を持ち出して、話を朝日バッシングへとすり替えている。
「(沖縄の)県民投票なんかでね。本当は国の安全保障を県民投票で決めるというのはおかしいんですよ。こっちのほうが“奇策”なんですよ。でも朝日新聞はこっちの(沖縄)県民投票を“奇策”と言わずに、この(大阪)W選挙を“奇策”って言ってね。ちょっと朝日新聞の論説委員はみんなね、ちょっとアンポンタンですよ」
いや「アンポンタン」は橋下氏のほうだろう。もう一度言うが、大阪都構想は2015年の住民投票で反対が賛成を上回り、否定されている。一方、辺野古新基地建設の県民投票は初めての試みであり、県民の「辺野古移設反対」の直接意思が投票結果としてようやく可視化されたものである。
今回、維新は都構想に公明党の協力が得られないことへの反発と、互いの任期を伸ばすという“党利党略”のため、W辞任&選挙という「奇策」に出た。それは完全に行政の私物化であって、事実、各報道機関の世論調査でも批判の声が大きかった。
ようするに、大阪W選挙と辺野古県民投票を比較すること自体、そもそもが馬鹿げているのだが、橋下氏はここで、わざわざ朝日新聞を「仮想敵」としてバッシングすることによって主張のトンデモさを誤魔化したとしか思えないのだ。
しかし、番組ではこうした“橋下流詭弁術”のおかしさを指摘したのは柿崎明二・共同通信社論説委員ぐらいで、その後も、橋下氏はその柿崎氏の言葉を遮って持論をまくしたてた。
たとえば、柿崎氏が同じ題目の住民投票をくり返そうとすることへ疑義を呈すと、橋下氏は色をなして「住民投票は勝つまでやっていいんですよ」と強弁。2015年の住民投票の前、当時、大阪市長だった橋下氏が「何度もやるものではない。1回限り」と会見で言っていたことを指摘されても、「それは僕が『一回』ということ(だから松井・吉村は関係ない)」などとつっぱねたのだ。
まさに子どものような屁理屈だが、この「勝つまでやる」という発言こそ、維新の本質をあらわしている。ようするに、何度負けても、その度に“幻の都構想”を辞任や入れ替え首長選のネタとして使い回す。そうすることで政治的に半死の維新を立て直そうとする。言い換えれば、大阪都構想とは維新にとっての“復活の呪文”なのであり、維新は行政を私物化する“都構想ゾンビ”というところだろう。