石野卓球は勝利したが、道徳ファシズムが敗北したわけではない
自身の果敢なツイートにより過剰な自粛を排する動きが出てきたことを、卓球は「焼け太り」と露悪的にうそぶき、ギャグ化して、「win win」などとからかい、逆に「バイキング」の説教やバッシングがただの“商売”でしかないことを、あぶり出したのだ。
こうした鮮やかな反撃を目の当たりにして、いまでは、ファンやネット民だけでなく、ネットニュースやオールドメディアまでが卓球の味方に転向。今度は一斉に『バイキング』叩きを始めている。
たとえば、「WEB女性自身」は「坂上忍 石野卓球への苦言に批判殺到!『誹謗中傷の領域』」という記事を配信している。ふだんは、さまざまな芸能人に対して“道徳警察”ぶりを発揮して、誹謗中傷を繰り返している「女性自身」がよく言うよ、という感じだが、いずれにしても、こんな逆転現象が起きてしまったのである。
冒頭で、「卓球がワイドショー言論に勝利しつつある」と言ったが、この状況を見るかぎり「卓球の完全勝利」と言ってもいいだろう。これまで、ネットやワイドショーに叩かれた多くのアーティストやミュージシャンが最初は闘うポーズを見せながら、結局、最後は世間の同調圧力に屈服してきたなかで、卓球は最後まで自分のスタイルを変えず、確信犯的な悪ふざけと、本質を突くテレビ批判で、その道徳ファシズムを押し返してしまったのだ。見事というほかはない。
ただし、ひとつだけ注意しておかなければならないのは、卓球が勝利したからといって、ワイドショー的な道徳ファシズムが敗北したわけではない、ということだ。今回、ネットやオールドメディアが途中から態度を変えたのは、卓球の頭の良さや強度に加え、卓球が世界的に高い評価を得ているミュージシャンであり、何があっても支持してくれる熱狂的なファンがいたことも大きい。二流以下のタレントやミュージシャンが同じことをやったら、相変わらずボコボコにされてしまうだろう、もちろん卓球も、状況によっては、倍返しされることもありうる。
そういう意味では、今回の逆転劇も結局、連中の“強いものにしっぽをふり、弱いものを叩く”という行動特性があらわれたにすぎない。ただし、卓球のおかげで道徳ファシズムのインチキぶりが多くの人々に可視化されたのは非常に貴重なことではある。
(本田コッペ)
最終更新:2019.04.07 09:49