問題の本質は、企業のコストカット、非正規雇用への依存だ
実際に複数の動画の状況を確認すると、周囲に社員などの監督者がおらず、バイトに現場をまかせっきりの時間帯があったことが伺えるが、これは企業側によるコストカットの結果、起きていることだろう。言い換えれば、騒動を受けて信頼を落としたのは、そうした非正規労働者に依存しているという構造的問題が原因であって、損害賠償等をアルバイトに請求しても抜本的な解決にはならない。
事実、今回の“バイト不祥事”で騒動となっている企業のなかには、以前から“ブラック労働”の実態が指摘されてきた会社が少なくない。
たとえばセブン-イレブンは、見切り販売の妨害をはじめとしたフランチャイズ加盟店主に対する過重負担や、アルバイトを低待遇で酷使し商品の買い取りノルマを課すなどの“ブラックバイト”を理由に、2015年の「ブラック企業大賞」を受賞。すき家でも数年前に「ワンオペ」と呼ばれる従業員ひとりで店舗を切り盛りする体制が問題化し、昨年5月には元アルバイトの男性と家族から、3店舗掛け持ちの長時間労働による睡眠不足で交通事故を起こし、精神的苦痛を受けたとして鳥取地裁に提訴された(原告男性は今年1月に被告「中四国すき家」と和解)。
他にも、バーミヤンを運営するすかいらーくグループの「すかいらーく」や、ファミリーマートでも従業員の過労死などが起きている。
外食産業、コンビニ大手等では、アルバイトは責任や労働と見合わない安い時給で働かされているところも少なくない。そのストレスが、相次ぐ「バイト不祥事」の遠因となっているのではないかという疑念も頭をもたげてくるのだ。
いずれにしても、安価な労働力を求め、バイト等の非正規労働者に過重な責任を担わせているという構造的問題への視線が、いま、SNSやマスコミで巻き起こっている“リンチ”のなかにはまったくない。そもそも、不安定雇用であるバイトに対して、正社員並みの愛社精神や職業意識を求めるということ自体に無理があると思うが、そういった視点の意見もほとんど出てこない。
ネットでは以前から、権力者や大企業よりも、無名の個人の不祥事やトラブルをあげつらって血祭りにするという“問題の軽重の逆転”がみられるが、テレビなどのマスコミが企業の責任を追及しないのは、明らかにバイトが不祥事を起こした企業が大口のスポンサーだからだろう。つまり、政権批判や大企業批判ができないため、そのかわりにお手軽な“バイト叩き”に精をだしているにすぎない。
しかし、「バカなことをしでかしたアルバイトを成敗してやった」と悦に入るだけでは、今後も同じようなことが繰り返されるだけだ。ましてや不祥事企業をかばい、軽い過ちをおかしただけのバイト個人に重たい法的責任を問おうとする動きを歓迎するのは、労働者が自らの首を自らで締めるようなもの。眉をひそめるような行為が相次いでいで話題になっているなかだからこそ、冷静にその背景を検討しなければならない。
(編集部)
最終更新:2019.02.13 01:46