大阪万博をストーリーに登場させた浦沢氏の『20世紀少年』(完全版1 小学館)
11月24日(日本時間)に、2025年の万博開催地が大阪に決まった。
本サイトでは先日、大阪万博が日本維新の会と安倍政権が押し進めるカジノ建設に血税をつぎこむための隠れ蓑になってしまっている構図を報じたが、そもそもそれ以前に、万博に関しては、1200億円〜1300億円という会場建設費に、800億円の運営費、それとは別に大阪市が負担する700億以上のインフラ整備など、費用についても懸念が広がっており、とてもではないが手放しで喜べるような代物ではない。
そんななか、『20世紀少年』(小学館)のストーリーに大阪万博を登場させたことでもおなじみの、漫画家の浦沢直樹氏が過去に行った発言がインターネット上で話題となっている。
浦沢直樹氏は、2017年3月27日付朝日新聞に掲載された「大阪万博誘致」をテーマにしたインタビューで、少年時代に大阪万博へ連れて行ってもらえなかったことが心残りだとの思い出を明かしつつも、このように語っていた。
「僕が描いた「20世紀少年」は、10分の1くらいが自叙伝です。この漫画で、僕は、万博に行けなかったことで相変わらず夢を抱いている自分を自虐的に笑っているんです。あの万博は「人類の進歩と調和」を指し示したけど、進歩を夢見るってことが今となっては切ない感じがしますよね。
もう1回万博をやろうとしているのが全く理解できない。万博のようなことをしないと、町おこしができないという発想なら古くさいですね。それに、今はネットでワンクリックすれば世界に「行ける」。感覚が変わっちゃってます」
万博のようなことをしないと、町おこしができないという発想なら古くさい──まさにその通りだが、松井一郎大阪府知事や安倍政権の頭にはそもそも、1970年の大阪万博のようなテーマ設定などなく、こういった巨大イベントをきっかけにしていかに金を引き出して、一部の利権者に利益をもたらすかといったことしかないのは明白だ。
11月27日には、早速その化けの皮が剥がれる出来事があった。この日、松井知事は万博に関する関係省庁連絡会議のため首相官邸を訪れたのだが、その場でこんな発言があったのだ。
「世界80億人が参加できる体制を作りたい、と世界各国で(の誘致活動で)風呂敷を広げすぎるぐらい広げてきたので、日本の総力を挙げていただかなければ実現不可能だ」(2018年11月27日付毎日新聞)
であれば、いますぐに返上すべきだろう。東京オリンピック・パラリンピックで引き起こされた問題が、大阪でまた繰り返されようとしている。
ご存知の通り、2020年の東京オリンピックはもともと「コンパクト五輪」を掲げて誘致を行ったが、開催が決まると予算は雪だるま式に膨れ上がり、もともと7000億円と謳っていた支出は3兆円にまで到達するのではないかとの試算が出ている。
先の松井知事の発言を見る限り、大阪万博も同じ轍を踏む可能性は否定できない。