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美智子皇后の誕生日談話「マクワウリ」に隠された意図が? 天皇夫妻が発信し続けた護憲・平和への思い、安倍改憲への危機感

護憲、戦争責任、反核、反ヘイト…美智子皇后が発し続けた安倍政権へのカウンター

 もとより、皇后は詩を愛し文学を研究するなど、深い教養をもつ人だ。例年、誕生日に際した文書コメントは、皇后自らが推敲を重ねてつくっていると言われる。今回の宮内庁による“注釈”も当然、皇后の指示によるものだと考えるべきだろう。

 そうした点を考えても、皇后は、マクワウリのエピソードを安倍首相に警句を発するために、あえて持ち出したのではないか、そう思えてならないのである。

 無論、こうした解釈が成り立つのも、美智子皇后がここ数年、婉曲的にではあるが、安倍政権の改憲や政策に警鐘を鳴らしてきたからに他ならない。

たとえば、2013年の誕生日文書コメントでは〈今年は憲法をめぐり、例年に増して盛んな論議が取り交わされていたように感じます〉としたうえで、基本的人権の尊重や法の下の平等、言論の自由などを定めた五日市憲法草案など、民間の憲法草案に触れて〈深い感銘を覚えた〉と回顧した。美智子皇后は〈市井の人々の間に既に育っていた民権意識を記録するものとして、世界でも珍しい文化遺産ではないかと思います〉と最大級に評価し、日本国憲法と同様の理念をもった憲法観が日本の〈市井の人々〉によってもつくられていたことを強調したのだが、これは、安倍首相ら右派の言う「現行憲法はGHQの押しつけだから改憲せねばならない」なる主張へのカウンターとしか思えないものだった。

 翌2014年には、自らA級戦犯の問題に踏み込み、その責任の大きさについて言及した。皇后は「私は、今も終戦後のある日、ラジオを通し、A級戦犯に対する判決の言い渡しを聞いた時の強い恐怖を忘れることが出来ません」として「その時の感情は、戦犯個人個人への憎しみ等であろう筈はなく、恐らくは国と国民という、個人を越えた所のものに責任を負う立場があるということに対する、身の震うような怖れであったのだと思います」と記したのだが、実は、この皇后発言の2か月前には、安倍首相がA級戦犯として処刑された元日本軍人の追悼法要に、自民党総裁名で哀悼メッセージを送っていたことが報じられていた。連合国による裁判を「報復」と位置づけ、処刑された全員を「昭和殉難者」として慰霊する法要で、安倍首相は戦犯たちを「自らの魂を賭して祖国の礎となられた」と賞賛したという。そうしたタイミングで皇后は、宮内記者会からの質問にはなかったA級戦犯の話題を自ら持ち出す、異例のコメントを発したのだ。

 そして昨年の誕生日文書では、ノーベル平和賞に「ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)」が選ばれたことを取り上げた。ICANは昨年7月の国連核兵器禁止条約の採択に貢献したことなどが評価されてノーベル平和賞を受賞したのだが、日本政府は条約批准を拒否、安倍首相は受賞に一言もコメントを出さないという時期に、美智子皇后はICANについて掘り下げて〈ようやく世界の目が向けられたことには大きな意義があった〉と大きく評価したのである。また、自身のエピソードを交えて軍縮の意義を強調し、〈奨学金制度の将来、日本で育つ海外からの移住者の子どもたちのため必要とされる配慮〉に言及するなど、安倍政権下での軍事増強やはびこる排外主義、ヘイトスピーチ、相次ぐ朝鮮学校の補助金停止問題を憂慮すると受け止められる文言も盛り込まれた。

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