神社本庁ホームページより
神社本庁の事務方トップである田中恆清総長が、今月11日に行われた役員会で辞意を表明した。
神社本庁といえば、全国約8万社の神社を包括する宗教法人だが、一方で、田中氏が副会長を務める日本会議らと連携し、復古的改憲運動などを展開。系列には神道政治連盟という極右政治団体を擁し、その国会議員部門である神道政治連盟国会議員懇談会は安倍晋三首相が会長を務めている。
本サイトの取材に対し神社本庁は、役員会のなかで田中総長の口から辞意の言葉があった事実を認めたうえで、「一方で田中は『自分一人だけの判断で決められるものではない』とも申しております。20日現在では辞表は提出されておりません」(教化広報センター担当者)と回答した。
田中氏は2010年に総長へ就任。異例の3期目に突入するなど長らく実権を握ってきた。
「神社本庁は、この田中総長と神道政治連盟会長である打田文博氏のコンビが牛耳ってきた。安倍政権や日本会議と一体化した右傾化、改憲路線を主導していたのもこの二人で、我々の間では“ツートップ恐怖政治”といわれていました」(神社本庁関係者)
その田中総長が今回、辞意を表明したのはなぜか。その背景には、本サイトで連続追及してきた“神社本庁・不動産不正取引疑惑”がある。
神社本庁の機関紙的専門紙「神社新報」によれば、田中総長は11日の神社本庁の役員会で「これ以上、皆さんがたからいろんな意味で暗に批判されるようなことは耐えられません」と言って辞意を示したという。
この「暗に批判されるようなこと」というのが、神社本庁の不動産不正取引疑惑だ。
「神社本庁の不動産不正取引は、本庁を支配する田中恆清総長と打田文博・神政連会長が関与していると言われているもので、元幹部の内部告発によって明るみに出たもの。ところが、田中総長らは告発した元幹部を報復人事で懲戒免職にするなどして、もみ消しをはかり、その元幹部から裁判を起こされる事態となったんです。その裁判はいまも続いているんですが、これが辞意表明に大きく影響しています」(全国紙社会部記者)
まずは、ことの経緯を振り返ろう。問題の不動産不正取引疑惑は、2015年、神奈川県川崎市にある神社本庁所有の職員用宿舎が、東京都新宿区の不動産会社「ディンプル・インターナショナル」(以下、ディンプル社)へ1億8400万円で売却されたことに端を発するものだ。
ディンプル社は売買契約日当日に職舎を別の不動産会社A社へ約2億1000万円で転売し、A社も翌年、大手ハウスメーカーB社にさらなる高額で転売。この“不動産転がし”によって職舎は最終的に3億円超の値がついた。つまり、神社本庁からしてみれば、全国の神社や氏子らの“浄財”からなる不動産を格安で手放したわけだが、その背後に次々と疑惑が浮上していく。
たとえば、問題の職舎は競争入札にかけられず、ディンプル社に随意契約で売却され、即日転売されていた。ディンプル社は新宿の小さな会社で、社長の高橋恒雄氏は、「日本メディア・ミックス」(以下、メディアミックス社)という別会社も経営しており、二社は同じマンションの一室に同居している。メディアミックス社は、神社本庁の外郭団体「日本文化興隆財団」が手がける季刊誌「皇室 Our Imperial Family」の定期購読販売を担当。その手数料などで利益を上げてきた。神社界関係者によれば「高橋社長は神政連の打田会長の子飼い的存在」で、実際、問題の職舎売却以前から、神社本庁関連の不動産取引に関与してきた。