南北対話の足を引っ張り続けたくせに、「私が司令塔」と言い出す厚顔
しかし、今回の南北首脳会談では、金委員長は弾道ミサイルの発射について「(未明に)もう叩き起こさない。私が確約する」と述べた、というのである。
ご存じの通り、安倍首相は昨年9月、「北朝鮮問題への対応について国民に問いたい」などと言い出し、北朝鮮問題を「国難」と呼んで解散総選挙をおこなったが、その「国難」は足を引っ張りつづけた南北の対話によって突破の道を切り拓かれようとしているのである。悪い冗談のような話だ。
ようするに、安倍政権はこれまで北朝鮮問題の解決や非核化の実現を目指していたのではなく、ただ北朝鮮危機を煽ることで政権浮揚をはかってきただけ。改憲を推し進めてきた安倍政権にとって、朝鮮半島情勢が安定し非核化が実現することは、むしろあってはならない事態だったのだ。
ところが、対話による平和的解決に米韓をはじめ国際社会が本格的に向かうと、安倍首相は今度は政権浮揚の道具に拉致問題をもち出しはじめ、今月22日におこなわれた拉致被害者家族会などが開いた国民大集会の場では、鼻息荒くこう述べた。
「南北、そして米朝首脳会談の際に、拉致問題が前進するよう私が司令塔となって全力で取り組んでいく」
まったく開いた口が塞がらない。この「私が司令塔」発言に対しては、拉致被害者家族である蓮池透氏も〈司令塔? この期に及んで。どうやって?〉とツイートしたが、至極ごもっともだ。
現に、先日おこなわれた日米首脳会談の共同記者会見で安倍首相は「ドナルド、あのときのあなたの言葉は、マール・ア・ラーゴで過ごした素晴らしい思い出とともにいまなお、私の胸に深く刻まれている」などと気持ちの悪い親密アピールを繰り出したが、対するトランプ大統領は安倍首相を見放しており、海外メディアも“安倍首相はトランプから見捨てられた”と伝えた。つまり、安倍首相の対北朝鮮外交はすべて失敗し、挙げ句は部外者扱いで拉致問題も文大統領やトランプ大統領任せという体たらく。きょうにしても「文大統領からの電話待ち」という状態で、それで「私が司令塔」とは片腹痛い。
しかも、トランプ大統領は南北首脳会談を受け〈朝鮮戦争が終結へ!〉などと興奮気味に祝福ツイートしたのに続き、中国の習近平主席についても〈私の良き友人・習近平主席の多大な尽力を忘れないでください〉〈彼がいなければ、もっと長く厳しい道のりだっただろう〉と謝辞をツイート。一方、「司令塔」で「リーダーシップをとってきた」らしい安倍首相については、今のところ一言も触れられていない。
改憲という自分の悲願のために危機を煽り、平和的解決を認めないような言動を繰り返した挙げ句、蚊帳の外に置かれているのにもかかわらず、いまだにあたかも自分の成果のように誇る。これぞまさに「外交の私物化」と言うべきだろう。これ以上、この男をリーダーにしていれば、どんどん世界から孤立を深めていくだけだ。
(編集部)
最終更新:2018.04.27 10:32