国際社会が平和的解決に努力を続けるなか、水を差し続けた安倍首相
2月の五輪開会式に際した日韓首脳会談では、文大統領に「米韓合同軍事演習を予定通り進めることが重要だ」と内政干渉的なことまで言い出して融和ムードへ冷や水を浴びせかけ、五輪開催中の日米電話会談後には「北朝鮮に最大限の圧力をかけつづけていく点で完全に一致した」などと発言。さらに、韓国が南北首脳会談実現に向けて動くと、外務省を通じて韓国に「まだ時期が早い」「思いとどまるべき」と、再三にわたって圧力をかけつづけたのである。
まさに米韓の足を引っ張り、北朝鮮との対話を食い止めようと必死で動き回っていたのだ。
さらに驚いたのは、3月になって韓国大統領府が韓国の文在寅大統領と金正恩委員長の南北首脳会談の合意を発表し、その後の米朝首脳会談や平和的解決への流れが決定的になったあとも、その態度を変えなかったことだ。
たとえば、菅義偉官房長官は、南北首脳会談合意について「対話のための対話であっては意味がない」などと非難に近いコメントを発表し、河野太郎外相も「経済制裁で困っているので、(金委員長は)必死にほほ笑み外交をやっているのだろう」と挑発した。
そして、安倍首相も、3月8日の参院予算委員会で対話路線を完全否定し、「圧力を最大限まで高める」と言い放った。
「対話に応じたからといって、たとえば制裁を緩める対価を与える、対話に対して対価を与えるということがあってはならない」
「核・ミサイル計画を放棄させるため、安保理決議の完全な(制裁)履行など、あらゆる方法で、圧力を最大現まで高めていく考えであります」
はっきり言うが、こんな態度を示したのは、世界中で日本の政府くらいだ。南北首脳会談合意のあと、トランプ大統領はすぐに「世界にとって素晴らしいことだ」と言明し、対話に意欲を示したことを「北朝鮮は真剣だと思う」と評価。そのほかロシアや中国、EUも歓迎姿勢を示した。ところが、日本政府と安倍首相だけは交渉の進展を期待するようなコメントは一言も出さず「対話に対して対価を与えるな」「まだまだ圧力を高めるぞ」と息巻きつづけた。
その上、金委員長と習近平国家主席の電撃的な首脳会談がおこなわれた際には、安倍首相も河野外務相もまったく情報を得ていなかったことが露呈。挙げ句、3月28日の参院予算委員会では、安倍首相は「北朝鮮の側から対話を求めてきた。圧力を最大限まで高めるわが国の方針を、国際社会の方針にするためにリーダーシップを取ってきた結果だ」と宣ったのである。
完全に孤立状態なのに「俺の成果」と言わんばかりに勝ち誇る──。まさに「裸の王様」としか言いようがないが、忘れてはいけないのは、安倍首相は北朝鮮問題を「国難」と呼んできたことだ。