「私がI am not ABEと発言した時」というのは、後に古賀氏の『報道ステーション』降板につながった一件のことを指している。
当時の放送を振り返ると、レギュラーコメンテーターだった古賀氏は、2015年1月23日の放送でISによる後藤健二さん、湯川遥菜さんの人質事件について、安倍首相が「ISILと闘う周辺各国に総額で2億ドル程度支援をお約束します」と宣戦布告とも取られかねない発言を行ったことを批判。その上で古賀氏はこう述べたのだった。
「“私はシャルリー”っていうプラカードを持ってフランス人が行進しましたけど、まあ私だったら“I am not ABE”(私は安倍じゃない)というプラカードを掲げて、『日本人は違いますよ』ということを、しっかり言っていく必要があるんじゃないかと思いましたね」
この発言に、官邸は大激怒。本サイトでも当時伝えているが、このとき「菅官房長官の秘書官」が番組編集長に電話をかけまくり、先方が出なかったために今度はショートメールで猛抗議したという。
このときのことを、古賀氏は著書『日本中枢の狂謀』(講談社)のなかで、この「菅官房長官の秘書官」のひとりの実名をあげながら、こう書いている。
〈一月二三日の最初の「I am not ABE」発言の直後、なんと番組放送中に、まず中村格官房長官秘書官(当時)から、報道局ニュースセンター編集長の中村直樹氏に電話があったという。たまたま中村編集長が電話を取り損ねると、今度はショートメールが入った。テレ朝関係者に聞いた話では、その内容は「古賀は万死に値する」といったような、強烈な内容だったそうだ〉
〈報道によると、この日、菅官房長官は、秘書官と一緒に官邸で番組を見ていたそうだ。その真偽はさておき、仮に直接聞いていなくても、私の発言を知れば、菅官房長官が激怒することは容易に推測できる。
秘書官としては、アリバイ作りのためにも、すぐに抗議しておかなければならない。それが秘書官の務めだ。そこで、とにかく放送中にアクションを起こしたことを菅官房長官に示すため、ショートメールを送ったのではないか、といわれている〉
中村格官房長官秘書官(当時)というのは、現在、警察庁総括審議官を務める警察官僚で、刑事局長時代に安倍御用記者の山口敬之氏の準強姦罪での逮捕を直前でストップさせるなど、「菅官房長官の側近」として知られる人物だ。
そしてその中村氏とともに、菅官房長官と一緒に官邸で番組を見ていて、菅官房長官が激怒したのを受け、テレビ朝日に「古賀は万死に値する」などのショートメールを送ったのが、当時菅官房長官の秘書官だった矢野官房長だというのだ。
この矢野氏と中村氏からの“脅迫”が決定打となって、古賀氏は2015年3月27日放送分を最後に降板に追い込まれることになったのだった。