ついにパワハラ社長を撃退! 全従業員の労働環境を改善することにも成功
組合は、こうした社長のパワハラ・暴言はきっちりと記録。組合名で抗議文を直ちに出すとともに裁判官にも伝えたところ、裁判官は期日に社長を出頭させたうえで、こうした発言をやめるよう説教をし、裁判所案として会社に以下の和解案を検討するよう伝えた。
1、被告は、原告らに対し解決金を支払う。
2、被告は、適正な手続きに則り従業員代表を選出し、三六協定を締結することを確約する。
3、被告は、原告ら及びその他従業員が法定労働時間を越えた時間外労働をした場合には、同時間外労働に対して労働基準法に基づく割増賃金を支払う。
4、被告は、原告ら及びその他従業員が休日出勤をした場合には、同休日出勤に対して労働基準法に基づく割増賃金を支払う。
5、被告は今後暴言等のパワーハラスメントととらえられる言動をしないことを確約する。
代理人間で和解に向けた最終調整が進められていた17年12月、会社は突如、社長の退任を発表。社長の長男が代表取締役社長に就任した。予期せぬ突然の発表に一同仰天した。社長の退任は「健康上の理由」とされていたものの、原告と組合がパワハラや違法行為を徹底的に追及した上に、裁判官からも説教されたことが、社長に退任を決意させる大きな契機となったことは間違いないだろう。
結局、新社長のもと、上記の5項目での和解が成立した。パワハラ社長はいなくなり、従業員は長年の抑圧体制から解放され、新体制での業務が始まった。
本件は、原告2人の残業代請求訴訟ではあったが、組合とタッグを組んで団体交渉と訴訟を並行して行うことで、結果的にパワハラ社長を追い出した上に、会社に対し全従業員に対する労務管理のあり方を根本的に是正させる和解を勝ち取ることができた。
「仲間と声を上げることで変えられる」「自分が自分の権利のために声を上げることは、他の人の権利を守ることにつながる」ということを示す一例として、多くの人に知ってほしいと思った次第である。
【関連条文】
三六協定 労働基準法36条
残業代 労働基準法37条
(今泉義竜/東京法律事務所 https://www.tokyolaw.gr.jp)
********************
ブラック企業被害対策弁護団
http://black-taisaku-bengodan.jp
長時間労働、残業代不払い、パワハラなど違法行為で、労働者を苦しめるブラック企業。ブラック企業被害対策弁護団(通称ブラ弁)は、こうしたブラック企業による被害者を救済し、ブラック企業により働く者が遣い潰されることのない社会を目指し、ブラック企業の被害調査、対応策の研究、問題提起、被害者の法的権利実現に取り組んでいる。
この連載は、ブラック企業被害対策弁護団に所属する全国の弁護士が交代で執筆します。
最終更新:2018.07.03 11:07