性教育バッシングによって何も教えられなくなった教育現場
保守的な政治家たちがこのように性教育のバックラッシュを進める一方で、日本の性教育をめぐる状況はどんどん危機的なものになっていった。『こんなに違う! 世界の性教育』(メディアファクトリー)のなかで、教育学者の橋本紀子氏は日本における性教育についてこのように指摘している。
〈日本では02年以降、学校の性教育に対する保守派の「性教育バッシング」が起きており、性教育の内容に対する厳しい抑圧と規制が強まっています。ちなみに、性教育バッシング派は、性器の名称を小学校低学年で教えること、性交と避妊法を小・中学校で教えることなども「過激性教育」として攻撃しています。
こうした「性教育バッシング」を反映してか、新しい文部科学省学習指導要領でも、小学校はもちろん、中学校でも性交や避妊法について取り上げていません。コンドームこそ登場するものの、それはあくまで性感染症予防の手段としてのみの紹介です〉
現行の学習指導要領では〈中学生は性行動をしないという暗黙の前提〉(前掲書)が存在しているようで、〈性交、出産場面、避妊については検定教科書には掲載されていません。そのため、「避妊法」を教えているのは約3割でした〉(前掲書)という惨憺たる状況にある。
今回やり玉に上がった足立区の中学校はそういった状況を鑑みて、それでもなんとか子どもたちのために必要な教育を施そうとしたのだろうが、結果としてこのような展開になってしまった。
ちなみに、「七生養護学校事件」はその後、元教員や生徒の保護者らが都教委と古賀都議ら3名の都議を提訴。その結果、09年には東京地裁で「都議らの行為は政治的な信条に基づき、学校の性教育に介入・干渉するもので、教育の自主性をゆがめる危険がある」として七生養護学校側が勝訴している。13年には最高裁判所が上告を棄却し判決が確定している。
このような判決がくだっているのにも関わらず、またもや起きた同じ都議からの教育現場への介入。この状況は看過していいものではない。
(編集部)
最終更新:2018.03.29 12:12