憲法前文に「類まれな誇りある国家」と謳うJCのトンデモ改憲草案
たとえばJC憲法草案では、憲法前文の書き出しがこんなポエムに丸々とってかえられている。
〈日本国は、四方に海を擁し、豊かな自然に彩られた美しい国土のもと、万世一系の天皇を日本国民統合の象徴として仰ぎ、国民が一体として成り立ってきた悠久の歴史と伝統を有する類まれな誇りある国家である。〉
日本国憲法では“主権在民”が宣言されている憲法前文第一段落に、いきなり“天皇崇拝”と“国家の誇り”を持ってきているわけだ。もはやこれだけでもクラクラしてくるが、JC草案では続く第一条で天皇を「元首」とし、「主権の存ずる日本国民の総意に基づく」という国民主権の文言を削除。現行憲法で9条が置かれる「第二章 戦争の放棄」はオールカットで、代わりに「第三章 安全保障」に〈個別的及び集団的な自衛権を有し、行使することができる〉〈軍隊を保持する〉と明記するなど、平和主義を叩き潰している。
さらに日本会議や自民党右派の主張と共通するものとして、JC草案は〈国民は、わが国の歴史、伝統及び文化を尊重し、子孫に継承する責務を負う〉を新設。婚姻に関しても、現行憲法第二十四条にある〈夫婦が同等の権利を有することを基本として〉という文言を削除し、かわりに〈家族は、共同体を構成する基礎であり、何人も、その属する家族の維持及び関係の強化に努めなければならない〉という、父権主義的家族観を憲法の条文で押し付ける。“女は家庭で亭主の帰りを待てばいい”という女性蔑視の考えとしか言いようがない。
他にもJC案ではやたらと国民の「責務」という文言を登場させて、事実上「国民の義務」の数を激増させているなど、総じて“憲法は国民をお国に縛り付けるもの”になっている。周知の通り、自民党が2012年に発表した憲法草案との類似点は多い。
さらに言えば、JCは毎年「基本方針」を公表しているが、第二次安倍政権下ではそのトップ項目が「成熟したナショナリズムによる国民意識の確立」(2015)、「知識と意識を伴った『民間防衛力』の確立」(2016)、「真の主権者教育による『全うな日本人』の育成」(2017)と、どんどん極右化していった。ようするに、JCはいまや、完全に安倍自民党の政策や改憲の野望を援護射撃するような態勢となっている。そう考えざるをえないだろう。
ひるがえって、今回の「宇予くん」の問題とその背景を俯瞰し直すと、そこにはやはり二つの側面があると言わざるをえない。ひとつは、JCが安倍政権やその周辺極右の政策をなぞる政治運動団体と化していること。そしてもう一つは、JCが企んだ改憲工作活動のトンデモぶりは、実のところ、そこに大層な保守思想など皆無であることを表しているだけでなく、国民のことなど何とも思っていないということだ。
いや、マジで実際、主権者に向かって「おでのムキムキ筋肉パンチで葬りさるど」って……。冗談でもヤバすぎるだろう。ホント、いちど改憲派の頭の中身を拝見してみたいものである。
(宮島みつや)
最終更新:2018.03.03 12:05