「宇予くん」は確信犯、〈対左翼を意識し、炎上による拡散も狙う〉
だが、これで騒動が終わるとは思えない。JCは「調査結果のご報告」のなかで、〈本会が企画した目的や実施内容と、実際に行われた投稿等は大きく異なって〉おり、もともとは〈個人間での草の根の議論を巻き起こすことができればという願いがございました〉などと弁明しているが、前述の工程表とみられる流出文書には「宇予くん」の「事業内容」としてこのように記されていた。
〈対左翼を意識し、炎上による拡散も狙う〉
〈つぶやき事例:
(キャラ設定狙い)「おで、今日は改憲デモでよく歩いたど。うちに帰ってプロテイン飲んで寝るど。」
(対左翼炎上狙い)「憲法第9条のおかげで戦争が起きないって言ってるやつ、頭おかしいど。おでのムキムキ筋肉パン(引用者注:「チで」と続くと思われる)葬りさるど。」〉
ネットメディア「BuzzFeed News」の取材によれば、青年会議所にこの文書の真贋を確認したところ「当会の会議資料の一部として残っているものであることは確か」と回答したという。であれば、どう考えても“企画した目的や実施内容とは異なっていた”とのJCの説明はおかしい。なお、同じ文書には「つながれ! 憲法改正賛成美魔女奥様図鑑全国版」および「つながれ! 憲法改正賛成ちょいワルおやじ図鑑全国版」なる動画配信企画についても記されていた。このバッドセンス。控えめに言っても頭が悪すぎる。
まあ、そういう意味では、JCらしいと言えなくもない。何しろ、日本青年会議所といえば地方の名家や企業の二代目、三代目が参加する“金持ちのボンボン、ドラ息子の集まり”。金にあかせた傍若無人なふるまいやグロテスクなセンスは有名で、これまでも数々の不祥事が取り沙汰されてきた。たとえば1998年2月には、旭川市でJCの会合があった夜の懇親会で、16歳の未成年女子に「女体盛り」をさせたことが発覚。これは当時の「FLASH」(光文社)が写真抜きですっぱ抜いたものだが、結果、4名のJC関係者らが売春防止法違反などで逮捕されている。
しかし、今回の「宇予くん」騒動を「頭の悪いドラ息子たちが暇にあかせて改憲運動に手を出して炎上した」と見るのは過小評価だろう。
そもそもJCは中曽根康弘、小渕恵三、森喜朗などの首相経験者、現役政治家では麻生太郎財務相、下村博文元文科相、石原伸晃前経済再生相、萩生田光一幹事長代行、平将明ネットメディア局長ら自民党の幹部議員を輩出しており、もともと右派の政治色が極めて強い。とりわけ、2006年の第一次安倍政権誕生と前後して、安倍氏のブレーンと言われる日本会議系の学者らと一体化していることも表に出し始めるなど、その右派傾向はますます顕著になっていった。