トンデモ記事を掲載した「SAPIO」18年1・2月号
発売中の保守系雑誌「SAPIO」(小学館)18年1・2月号に、「隣国のプロパガンダに利用されてはいまいか 検証 中国・韓国メディアが重宝する日本知識人の研究」なるトンデモ記事が掲載されていた。
署名は同誌の編集部。〈(中国・韓国メディアに)頻繁に登場する日本の識者がいる。その言説は、中国や韓国の意向に沿うものが多く、時には日本の国益を損ないかねない偏ったもの〉としたうえで「検証」するというリードだが、本文を読んでみると、完全に中国・韓国メディアの取材を受ける学者や知識人を“反日日本人”とバッシングする内容である。
たとえば記事では、保坂祐二・世宗大学校教授が韓国に帰化していることをあげつらって、〈韓国のメディアが、日本を批判する“元日本人の発言”を都合良く使っている様子が窺える〉と攻撃し、元朝日新聞記者の植村隆・韓国カトリック大学校客員教授に対しては、〈慰安婦問題が解決して欲しくないと考えている勢力の代弁者となってはいないか〉と決めつける。
さらに、山口二郎・法政大学教授については、極右思想教育が取りざたされた森友学園問題をめぐって〈これは今の日本の政権中枢に右翼思想に賛同するる人物がはびこっていることを表します〉と述べたのを問題視。政治家の思想傾向に関する論評まで「反日」呼ばわりするとはクラクラしてくるではないか。
しかも、山口教授は「SAPIO」の取材に「中国による日本批判に加担するなど、とんでもない言いがかりである。その種の言いがかりを恐れて、自国を批判することを識者、メディアが放棄すれば、それこそ日本が中国のような言論不自由の国になることを意味する」と真っ当な反論をしているのだが、にもかかわらず記事は〈その言論不自由の国のメディアに都合良く利用されていなければいいのだが〉と結論ありきの無茶苦茶な言いがかりを重ねる始末だ。
ようするに、「検証」とは名ばかりで、他国メディアの取材を受けたリベラルな言論人に“中国・韓国を利する反日日本人”とレッテル貼りし、吊るし上げているわけだが、実は、この記事をめぐっては昨年11月27日、中野晃一・上智大学教授が、「SAPIO」からの取材依頼の裏側をTwitterで暴露していた。