加計の獣医学部新設に反対する大学設置審の議事録を消し去った文科省
しかし、文科省がそんな国民の要求に応えることなどありえないだろう。加計学園の獣医学部新設についても、文科省はもっとも重要な審議記録を消し去っていたことが明らかになった。
12月27日に文科省大学設置・学校法人審議会(設置審)の議事要旨を公表したのだが、この議事要旨を読んでも、一体どんな議論がおこなわれたのか、その詳細が全く掲載されていなかったのだ。
たとえば、12月9日に設置審が加計学園の獣医学部新設を認める結論の答申をしたあとには、複数の委員が「主査(座長)の委員から訴訟リスクがあると告げられ、圧力を感じた」と証言。NHKの報道でも、委員が「依然として実習体制が十分でない」と指摘したところ、取りまとめ役から「設置審としてこれ以上認可を先延ばしにすれば、学園側と訴訟を含めたトラブルになる可能性がある」と言われたという具体的な証言が出ていた。
しかし、今回公表された議事要旨のなかにそのようなやりとりは皆無。それもそのはずで、公開されたのは審査会と分科会のもので、実質的な審査をおこなった専門委員会の議事は公表されていないのだ。しかも、加計学園の獣医学部について触れているのは計55ページ中17行だけだった。
この「ハリボテの情報公開」をおこなった林芳正文科相は、1月5日に「委員の率直な意見の交換が阻害されて公平な議論を妨げることのないよう配慮する必要がある」「既に全ての審査意見を公表しており、透明性の確保は図られている」(共同通信6日付)と述べたが、一体どこに「透明性」があるというのだろう。実際、12月29日の毎日新聞では、設置審専門委員会の複数の委員が「(加計学園は)獣医学部新設の前提となる4条件を満たしていない」「本来なら来年度も再度審査すべきだった。時間切れになった」と証言している。つまり、設置審においても「2018年4月開学」という「総理のご意向」のとおりの日程で進めることが重視されたというのに、そうした事実は封じ込められている状態なのだ。
国家戦略特区における議論でも、安倍首相は「議事はすべて公開しています」と何度も主張してきたが、ワーキンググループによる愛媛県と今治市へのヒアリングに加計学園幹部3名が同席していたのにその事実が伏せられていた上、発言内容を一部削除することで発言主旨を真逆に書き換えるという改竄までおこなわれていたことも明らかになっている。こうした背信行為を働いておきながら、なおも事実を隠そうとしているのである。