テレビ朝日『相棒』番組サイトより
元旦早々、なんとも興味深いドラマが放送された。『相棒16 元日スペシャル』(テレビ朝日)だ。実は、そのストーリーに、安倍政権中枢に実在するある人物を彷彿とさせる“黒幕”が登場するなど、いま日本が直面する現実を批評的に描いた作品となっていたからだ。
まずは、その概要をざっと紹介しよう。年末のイベント会場で発砲事件が起こる。使用された拳銃は警察官に支給される拳銃(サクラ)だ。会場から加害者と同時に被害者も姿を消すが、被害者と接触のあった3人の高校生が半年前から行方不明となっていたことが明らかになる。
この少年たちは、ハッカーとして警察庁のサーバーに侵入してしまったことをきっかけに、「安田」を名乗る人物に軟禁されていた。そして発砲事件も「安田」から逃れるために、少年たちが計画したものだった……。
ストーリーだけ追うと少々荒唐無稽に思えるかもしれない。が、しかしその内容とそのディテールは現在の安倍政権下で現実に進行する監視社会、公安警察の暗躍、そしてその危険性を示唆する要素が散りばめられていた。
まず、「安田」が少年たちを連れ去る際に使ったのが「特定秘密保護法」だった。警察庁のサーバーに侵入したのは、「10年以下の懲役、または1000万円以下の罰金」だとして、貧しい祖母と生活する少年を恫喝した。そして「安田」の目的こそ、リストアップされた政府要人、官僚たちのPCなどにハッキングさせ、その個人情報やスキャンダルなど弱みを握ることだった。「安田」の正体は公安関係者(公安警察か公安調査庁かは明らかにされなかったが)であり、実際、ハッキングして得た情報収集をもとに、要人たちを脅迫、ある時にはスパイにするなど思いのままに操り、ある時にはその地位から失脚させるなど様々な工作を行っていった。
たとえば、各省庁の幹部人事を一元管理する内閣人事局長を脅し、官僚人事を牛耳ろうとするが、しかし局長はこれに耐えられず自殺。その局長のカバンから何者かが遺書を抜き取ったと証言をした男性には、息子の就職をネタに口を封じる。さらに反町隆史演じる特命係・冠城亘に対しても「安田」が接触、「(ある人物の)人生がめちゃくちゃになる。警察キャリアもおしまい」などと脅して、捜査情報を提供させる。さらに仲間由紀恵演じる広報室課には、過去にロシア諜報部員との間に一人娘をもうけるなどの不適切な関係、スパイ容疑が存在したが、その際の秘密のやりとりをちらつかせ、都合のいいフェイク情報をマスコミ発表させようとする。また内閣官房副長官には息子の薬物使用をネタに、辞任を迫る──。
これって何かに似ていないだろうか。そう、これらは決してドラマの中の絵空事などではない。現実社会においても、公安が政治家の身体検査を行い、また官僚に対する監視が行われてきたことは公然の事実だ。とくに安倍官邸は、公安警察を使って官僚たちを勤務時間外もその監視下に置くなど、徹底している。