★世界的フェイク賞
「共謀罪批判の特別報告は国連の総意じゃないと言っていた」国連トップの発言を捏造した安倍首相
共謀罪の国会審議中の5月、国連人権理事会の特別報告者・ジョセフ・ケナタッチ氏が法案に懸念を表明する公式書簡を政府に送ったことに対し、安倍首相は国会でこう述べた。
「この点について、G7サミットで懇談したアントニオ・グテレス国連事務総長も『人権理事会の特別報告者は、国連とは別の個人の資格で活動しており、その主張は必ずしも国連の総意を反映するものではない』旨、述べていました」
新聞各紙なども、外務省の発表そのままに「ケナタッチ氏の書簡は必ずしも国連の総意ではないとグテレス事務総長が語った」などと報じた。また、慰安婦問題にかんする日韓合意についても〈グテレス氏は合意に「賛意」と「歓迎」を表明した〉(産経新聞28日付)などと伝えていた。
が、これはウソだ。事実、国連が5月28日付でプレスリリースにはこう書かれている。
〈シチリアで行われた会談のなかで、事務総長と安倍首相はいわゆる「慰安婦」問題について話し合った。事務総長は日本と韓国のあいだで解決されるべき問題だということに同意した。事務総長は具体的な合意内容については言明せず、原則としてこの問題の解決策の性質と内容は二国に任されるべきと話した。特別報告者による報告書に関し、特別報告者は人権委員会に直接報告する、独立した専門家(experts that are independent and report directly to the Human Rights Council)であると語った〉
ようするに、グテレス事務総長は日韓合意に「賛意」や「歓迎」など見せず、実際には「具体的な合意内容については言明しなかった」。また、特別報告者についても「国連の総意ではない」という文言はなく、“independent”すなわち憲法でいう「裁判官の独立」と同じ意味で、何者にも干渉されない存在であることを説明していただけだった。
そもそも、リリース内ではケナタッチ氏の名前も共謀罪やテロ等準備罪、組織犯罪対策という言葉も出てこず、普通に読むと特別報告者の位置づけに関する一般論、あるいは前段の「慰安婦問題」における特別報告者の話の可能性もある。
つまり、安倍首相と政府は国連事務総長の発言を歪めたうえ、自分たちの言葉を勝手に足してマスコミに流し、共謀罪の正当化に利用しようとしたのである。にもかかわらず、国内マスコミは外務省発表や「日本政府の説明」を検証せずに断定的に報道したのだ。言い換えれば官製フェイクニュースの拡散に大きく加担したのである。欧米メディアでは、ここまで政府べったりの報道にはならないだろう。政府による情報操作に対する国内マスコミの脆弱さを露呈させた一件だった。