★偏向妄想賞
「加計問題は朝日とNHKが共謀した捏造」陰謀論を真顔で語る安倍御用評論家・小川榮太郎センセイ
自民党が5000冊近い数の大量購入をしていたことが発覚した『徹底検証「森友・加計事件」――朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』(飛鳥新社)なる本。選挙期間中に発売された同書の著者・小川榮太郎氏は『約束の日』(幻冬舎)という安倍ヨイショ本でデビューした自称文芸評論家で、報道圧力団体「放送法遵守を求める視聴者の会」の創設メンバーである。
内容は、森友問題や加計問題でスクープを連発していた朝日新聞を標的に、〈「冤罪事件」を計画し、実行した「主犯」〉〈「安倍叩き」のみを目的として、疑惑を「創作」した〉と攻撃するものだが、記述の具体的な根拠はほとんどなく、小川氏の陰謀論的分析が書きなぐられているだけ。
たとえば、例の「官邸の最高レベルが言っていること」等が書かれた文書をNHK(5月16日『ニュースチェック11』)と朝日(5月17日付朝刊)がスクープしたことについて、小川氏は〈ある人物が朝日新聞とNHKの人間と一堂に会し、相談の結果、NHKが文書Aを夜のニュースで、朝日新聞が翌朝文書群Bを報道することを共謀したとみる他ないのではあるまいか〉などと、“朝日とNHKの共謀”と結論づけていた。
まったくのデタラメである。そもそも「夜11時のスクープと翌朝朝刊のスクープが偶然にも重なることがあるはずがない」という前提が間違っている。朝刊の最終版締め切りは午前1時から1時30分。夜11時台のテレビのニュースが出た後、新聞が翌日朝刊でそれを後追いしたり、記事を修正したりなんてことはしょっちゅう起きている。実際、このときも朝日が一連の「総理のご意向」文書を報じているのは最終版のみ。朝日はNHKが文書の存在を報道したのを知って、入手していた別の文書を報道したにすぎない。
こんな感じで荒唐無稽な陰謀論が次から次に展開される同書だが、国会でも「朝日が加計問題を捏造した」なる話を持ち出すトンデモ議員(維新・足立康史など)が出てくるなど、影響は小さくなかった。あの“弱腰朝日”もさすがに堪忍袋の緒が切れたのか、同書の虚偽を指摘したうえで小川氏と版元に謝罪と訂正、損害賠償を求めた。
しかし小川氏は意に介さず、〈朝日新聞と小川榮太郎──どちらが正しいかが問題なのではありません。最終的な結論が「捏造」と出ようと、貴紙の「表現の自由の範疇」だと出ようと、私は構わない〉〈「月刊Hanada」2月号〉などと身も蓋もない開き直りをして謝罪・訂正を拒否。結局、先日朝日は名誉毀損で提訴したのである。
小川氏にかぎらず、ネトウヨや安倍応援団全体に言えることだが、連中は政権に都合の悪い報道を「フェイクニュース」とレッテル貼りをし、攻撃する。だが、その主張の根拠じたいが、事実に基づかない妄想、陰謀論、ネットのデマなのだ。小川氏の虚説が司法の場で徹底追及されることを期待したい。