「さすがに見てて、安倍さんね。ちょっと稲田さんをもっと早く楽にさせてあげたほうがいいって感じちゃったんですよ。苦しそうすぎて」「政治家さんって大変ですよね。嫌になりません? ご家族の方は心配されていたんですか?」
そもそも坂上は、当時、稲田の一連の問題を『バイキング』で盛んに取り上げ、「発言がコロコロ変わっちゃいますよね」「自覚のなさ、知識のなさっていいんですかね?」「やっぱり頼りないと思ってしまうし大臣としての資質が問われてもしかたがない」と顔をしかめて批判していた。そして今回の稲田との対談の合間には、当時のVTRも流されている。しかし、それは視聴者に向けてのアリバイ的なものなのだろう。たとえば、先の都議選で稲田が「自衛隊としてお願い」発言で批判され、謝罪したことがVTRで紹介されたが、インタビューでは完全スルー。そして今回、坂上は決して稲田への批判を口にしようとしなかったし、問題をつっこもうともしなかった。ひたすら稲田の話を拝聴し、それに逐一同調したのだ。
まるでアイドルや芸能人が、ちょっとした不祥事や舌禍事件を起こし、SNSが炎上しちゃった、ちょっと失敗しちゃった、それを振り返るという、軽〜い感じであり、稲田のイメージアップ、復帰の足がかりをしようとしているかにも思えてくる。
ある意味圧巻なのは、インタビューのラストだった。坂上は楽しそうに稲田を礼賛し始めたのだ。
「今、こうやってお話を聞くと、明快だし、わかりやすいんですよ。ただ国会とかになると『えっ、稲田さん大丈夫ですか』と。言葉もそうだけど、歯切れとかっていうのも、我々視聴者って感じるじゃないですか。えっ、いまお話されているまんまで、パンパンパンって言ったら、あそこまでの印象はなかったのかな、って思っちゃったんですけど」
「稲田さんって隠さないですよね。普通ね。防衛大臣やった人ですよ。そういう人が普通に反省を口にされるじゃないですか。もうちょっと格好いいこと言うのかなって。そして僕ら年下だけどイラっとしていたかもしれない」
さらに「目指しているのは総理ですか?」と質問し、「僕なんか女性の総理ってなんで出てこないのって思うくらいなんですよ。腹くくったら、男なんかより全然太い。本当好き嫌いは別として、本当に頑張って欲しいんですよね。女子に」。そして、稲田を見つめながら、「今日、なんか話せて楽しかった」と謝礼まで述べ、稲田もこれに同調すると「その笑顔でちょっとおやじキラーになっているんじゃないですか。だって年上だけど可愛い〜って思っちゃうもん。稲田さ〜ん」とヤニ下がったように、本気で嬉しそうな表情を見せたのだ。
たしかに坂上はかなり酔っぱらっているように見えたが、『ダウンタウンなう』(フジテレビ)などでは、酔っぱらって説教トークをすることだってしょっちゅうではないか。
まるで楽しい出会いの場、合コンかという、絶句してしまうような展開だったが、これが噂に聞く、稲田の“必殺おやじ殺し術”なのだろう。笑顔で相手の男を上手にのせることで、男のほうは“自分が男としても好かれている”と特別感とイケメン気分まで味わえ、気分よく錯覚してしまう。しかもこうした稲田の秘法が効くのはおやじだけではなかった。なにしろ年下の坂上も、イチコロになり、手の平の上で転がされてしまったのだから。加えて坂上が、稲田復活の都合のいいPRにまんまと利用されてしまったことも大問題だ。
おそるべし稲田である。
(編集部)
最終更新:2017.12.30 11:52