働き始めてたった1週間で、会社が売却されることに!
「騙されました!!」
相談者のAさんは悔しい思いをにじませながら、自身の置かれた状況を説明してくれた。
Aさんは女性の薬剤師、相手方はM薬局である。M薬局は都心の一等地にあり、経営者であり自身も薬剤師であるK氏は、やはり一等地に自宅を構えた資産家でもあるという。
Aさんは、相談日の2週間ほど前に正社員として雇われた。子育てのためにしばらく現場を離れていたAさんであったが、お子さんも大きくなり、薬剤師として復帰しようと長く働ける職場を探していた。先に決まりかけていた薬局を断り、より働きやすそうなM薬局を選んだ。
働き始めて1週間。Aさんは社長のK氏から衝撃的な発言を受ける。
「2カ月後にこの薬局を売ってしまうんだけど、Aさんどうする?」
詳しく話を聞いてみると、どうやらこういうことらしい。M薬局の経営は芳しくなく、K氏は半年以上前からM薬局を丸ごと事業譲渡してしまおうと考えていた。そして、ついに売却先が決まったのだという。しかし、売却先に全ての従業員は受け入れられない。そのことを知った従前の従業員は、早々に転職先を見つけて退職していった。Aさんの予想では、その人手不足を補うために自分が雇われたのではないかという。そして、入社した直後に、事業譲渡をすることを告げられたのだ。
事業譲渡の場合に雇用関係がどうなるのかということを確認しておこう。ある会社とある会社との間で事業譲渡が行われる場合、譲渡の対象となるものの範囲は事業譲渡契約(つまり、会社どうしの契約)の内容によって決まる。雇用が受け継がれるのかどうかについても、契約の内容次第だ。さらに、譲渡の対象になったとしても、雇用関係の移転については労働者(今回はAさん)の同意が必要となる。