『シン・ゴジラ』について語った元文科省事務次官の前川氏
昨年、大ヒットした庵野秀明監督の『シン・ゴジラ』がきょう、テレビで初放映されるが、この映画をめぐって、加計学園問題を告発した元文部科学省の官僚トップ、前川喜平・前文科事務次官が興味深い事実を明かしている。
安倍首相の最側近で、加計学園問題でも文科省に強硬に圧力をかけていたことで知られる当時の官房副長官、萩生田光一氏が、各省庁の事務方トップを集めた事務次官会議の席で、『シン・ゴジラ』を観るように力説していたというのだ。
この証言が掲載されているのは、先日発売された前川氏と前川氏の先輩でもある元文部官僚の寺脇研氏の対談本『これからの日本、これからの教育』(ちくま新書)。同書は、教育行政の中枢にいた二人が、加計問題はもちろん、いま日本を覆う新自由主義と国家主義が教育行政にどう影響を及ぼしてきたかを、自らの官僚としての体験をまじえながら分析するという非常に興味深い一冊だが、そのエピソードが語られたのは、まさに加計問題に代表される安倍政権の行政を歪める政治手法がテーマになっていたくだりだ。
省庁間の議論は一切なく、内閣府が「総理のご意向」を笠に着て高圧的に政策を押しつけてくる政治手法について、二人はこう批判する。
〈寺脇(略)今年五月十七日の「朝日新聞」朝刊で「総理のご意向」文書のことが報じられたんだけど、これを見てまず思ったのは、こんなふうに物事が決められているのか、ということ。もし外交とか安全保障で、こんなやり方がまかり通ったら、それこそ大変なことになると思った。
前川 実際、外交でも起こっているようですね。外務省と官邸の間に、相当、ポリシーの違いがあると言われています。外交にせよ、内政にせよ、行政の全般にわたって、総理官邸にいる「秘書官」「補佐官」「参与」などの肩書きを持った人たちが、いわば跳梁跋扈している状況があります。
寺脇 そのとおり。そこで問題なのは、政治家の側用人が、自分のいいように政治を仕切っているということです。〉
そして、こうしたやりとりのあと、寺脇氏がまず、『シン・ゴジラ』のことをこう切り出した。
「その意味では、『シン・ゴジラ』(庵野秀明監督、二〇十六年)は、日本が存亡の危機に立たされているというのに、それを官房副長官が仕切っているという、ダメな映画です。官房副長官なんて、それこそ側用人なんですね。(略)そういえば『シン・ゴジラ』って、安倍総理も好きなんだよね。」
すると、前川氏がこの発言を受けて、こんなエピソードを語ったのである。
「事務次官会議には、三人の官房副長官がそろって出席することになっていますが、萩生田(光一)さんが、あの映画をぜひ観るようにとおっしゃったのを覚えています。」