日本軍の残虐行為をなかったことにしようとしてきた安倍首相
特集の最後にキャスターの星浩は、このように総括した。
「戦争というのは大きな被害を生む一方で加害の積み重ねでもある。一人ひとりが加害について振り返ることは非常に必要だが、そこでいちばん重要なのは政治指導者が加害の歴史をきちっと見つめて、それを反省して、後世に伝えていくこと」
だが、その政治指導者である安倍首相にそんな姿勢はみじんもない。安倍首相は15日の終戦の日におこなわれた全国戦没者追悼式で、案の定、加害責任および反省を口にすることはなかった。第一次安倍政権時の2007年には歴代首相と同様に「多くの国々、とりわけアジア諸国の人びとに対して多大の損害と苦痛を与えました」とふれていたが、第二次安倍政権以降は一言も言及していない。
それは、「もう謝ったから」などという理由ではない。安倍首相自身が過去の日本軍が犯した残虐行為を悪いとはまったく思っておらず、むしろ、積極的になかったことにしようとしているからだ。
実際、安倍首相と思想がぴったり一致するという稲田朋美は、2014年10月3日の衆院予算委員会で、強制連行や731部隊、そして毒ガス被害の裁判について取り上げ、「事実に反して証拠もないのに、日本の戦時中の加害事実がどんどん書かれることは、非常に日本の名誉を毀損することだ」と述べている。強制連行も731部隊も毒ガス問題も、「事実に反する嘘」だと言ってのけたのだ。
このような人物が防衛相だったと思うとあらためて背筋が凍るが、安倍首相も侵略による加害行為を正当化していることは、過去の発言や戦後70年談話からもあきらかだ。
そして、この安倍政権の歴史を捻じ曲げ、加害責任に蓋をする姿勢に呼応して、テレビは終戦記念日にも、日本軍が他国に対しておこなった残虐行為にほとんどふれようとしなくなった。たとえば、戦後70年という大きな節目の年の2015年、NHKは戦争特集番組を例年よりも多く放送したが、加害行為に言及した番組はひとつもなかった。