排外主義がはびこる状況を後押しする日本相撲協会の問題
これを受けて報知新聞社は翌日、見出しから「モンゴル帰れ」の部分を削除。また、記事本文にある「モンゴルに帰れ!」「恥を知れ!」などのヤジ紹介部分も削除したうえ、29日にはウェブサイト上に〈大関・照ノ富士関の記事と見出しで、観客のヤジを記述した部分に、ヘイトスピーチを想起させる表現がありました。人権上の配慮が足りず、不快な思いをされた皆様におわびします。〉と謝罪のコメントを出した。
ただ、そもそも問題なのは、こういった出自を理由とした差別がはびこっている状況を放置している日本相撲協会だ。
いや、むしろ日本相撲協会はそういった状況を積極的に後押ししていると断じてもいいかもしれない。その最たるものが国籍問題だ。
白鵬は引退後も角界に残り一代年寄になりたいとしているが、日本相撲協会の規約には〈年寄名跡の襲名は、日本国籍を有する者に限ることとする〉とあり、その障壁が横綱を苦しめ続けている。この問題はメディアでもしばしば議論となっているが、日本を代表する国技が、その大変な功労者である白鵬に対しこのような排外主義的な姿勢を取り続けることに疑問の声をあげる人は多い。
「週刊新潮」(新潮社)17年8月3日号には、その規則をもち出し、白鵬に特例もかたくなに認めない理由として、「モンゴル勢に日本相撲協会が乗っ取られかねないと危惧したからです」とのコメントを北の湖前理事長に近かった人物からとっている。本当にそのような保身的な理由なのだとすればあんまりだろう。
前述した『クローズアップ現代+』のなかで白鵬は、これからの相撲人生についてこのように語っていた。
「大相撲のおかげでここまで皆さんに愛されることができたし、その恩返しをしなければいけない。自分の国と、自分の両親、家族を愛せなかった人は、他の国の人々を愛せないと思うんですよね。モンゴルという国を私は愛しているからこそ、日本の大相撲でここまでがんばれていると思うし、そして、この国の人々に愛され、自分も愛していると思うんですよ。できるだけ長く、横綱を務めることが国の架け橋、また、世界中の相撲ファンのためであるのかなと思いますね」
そもそも愛国心をもたなければならないとも思わないが、愛国心と排外主義をはきちがえたような差別思想は、一部の相撲ファンだけの問題でなく、現在日本中に蔓延しているものだ。白鵬の言葉も、デーモン閣下の言葉も、相撲界だけの問題と片づけるのでなく、いま日本を覆う排外主義や差別についてあらためて考え直す契機としたい。
(編集部)
最終更新:2017.12.06 04:29