『ミヤネ屋』、読売テレビが高須院長に屈した理由
たとえば、2015年に起こった、『報道ステーション』(テレビ朝日)のCMスポンサー打ち切り問題だ。当時、安倍政権による安保法制の強行採決が大きな問題となっていたが、高須氏は『報ステ』が安保法制反対派の意見ばかりを報じているなどとし、その報道姿勢を疑問視、スポンサー契約を打ち切った。
また、今回の『ミヤネ屋』での浅野氏に関しても、高須氏は“番組スポンサー”という立場をフルに活用している。25日のツイッターには浅野氏への提訴予告だけでなく、『ミヤネ屋』、そして読売テレビに対しこんな通告さえしていた。
〈とりあえずミヤネ屋の提供降りるか。詫びを急いだほうがいいと思うけど…〉
だが、悲しいかな、読売テレビ、そして『ミヤネ屋』はそれに抗する気などさらさらないらしい。番組では司会の宮根誠司が「大変申し訳ございませんでした。高須院長、これからも仲良くしていただけますでしょうか。ぜひイエス!とおっしゃっていただけたらと思います」と高須氏に媚びへつらうようなコメントを出し、番組途中には、ピコ太郎と派手な衣装で踊る高須氏が登場する高須クリニックのコマーシャル映像がこれ見よがしに流されるという醜悪なシーンが繰り広げられていた。
さらに、こうしたメディアの弱腰の背景には、高須氏に熱狂的な“ネトウヨファン”がくっついていることも関係しているかもしれない。高須氏のツイッターのフォロワー数は26万を超えるが、高須氏が『ミヤネ屋』への提訴予告をすると、ネットの反応は『ミヤネ屋』、浅野氏への批判と高須氏を賞賛するコメントで溢れた。こうした熱狂的ファンに、読売テレビは電凸攻撃を仕掛られることを恐れた可能性もある。
金を持っているためいくらでも裁判でも起こすことができるうえ、大スポンサーで、ネトウヨのファンもついている高須氏は、テレビにとっては一種のタブーになってしまっているということなのだろう。
だが、高須氏に屈するというのは、どういう意味があるか、メディアは本当にわかっているのか。意見・論評について謝罪してしまうことがこれからの表現・報道の自由を制限することになるのはもちろん、高須氏は、ただの美容クリニック経営者ではなく、ここ数年顕著にネトウヨ化し、歴史修正主義、安倍政権支持を盛んに発信しているきわめて政治的な存在なのだ。
これを許したら、金の力にあかせてCMを流し、気に入らない報道を訴訟するような人間や企業がタブーになっているいまのメディア状況をさらにエスカレートさせ、この国は本当に一部の金持ちだけがマスコミを支配し、世論を誘導できることになってしまうだろう。マスコミはそのことをもっと強く自覚すべきである。
(編集部)
最終更新:2017.12.06 04:28