複数アカ規制の影響?
この背景にはもちろん、加計・森友疑惑に一連の不誠実極まりない対応や強引すぎる国会運営など安倍政権のあまりの横暴さに、普段は政治に関心の薄い層にも安倍政権に対する怒りが広がり、批判コメントの絶対数が増え、ネトウヨのコメントがスミに追いやられた可能性もあるだろう。また保守層や自民党支持層にも政権への不信感が高まっているということもあるだろう。
しかし、これにはもうひとつ大きな理由がある。実はYahoo!ニュースは、6月5日にマルチポスト(同じ文章を短期間に繰り返し投稿する行為)への対策の強化を、さらに6月14日には複数のアカウントを利用した投稿の事実上の禁止を、スタッフブログ上で公表していた。
特に重要なのは“複数アカウントでの投稿禁止”だろう。つまり、今までは同一人物が複数のYahoo!アカウントを取得して、それを経由して大量に投稿することで、多くの人物が同じ様な意見を表明しているように見せかける印象操作ができた。言い換えれば、現実にはごく少数派の意見なのに、ヤフコメを使って「世間の多数派の反応」を“捏造”するということが、実際に行われていたのである。
事実、数カ月にはこんな興味深い報道があった。立教大学の木村忠正教授(ネットワーク社会論)とYahoo!ニュースが、2015年4月の1週間に配信した政治や社会など硬派なテーマの記事約1万件と、それに対するヤフコメ数10万件を共同で調査。すると、実に1週間で100回以上コメントを投稿した人が全体の1%おり、その1%の人たちによる投稿で全体のコメントの2割を形成していたことがわかったという(朝日新聞デジタル17年4月28日)。
ようするに、これまでヤフコメで跋扈していた安倍応援団的なコメントは、実は少数のネトウヨが複数アカウントを用いるなどして大量に書き込んでいたものだった。しかし、6月の“複数アカウントでの投稿禁止”により、そうした行為が不可能になったことで、全体としてヤフコメでは現実に即したネトウヨと一般人の比率に戻った。すると、少数のネトウヨ的言辞は一般人のコメントに埋まって、すっかり目立たなくなってしまった。そういうことではないのか。
だとすると、これは自民党のネット戦略にも、多少なりとも関わってきそうだ。
周知の通り、自民党は下野時にネット工作別働隊・J-NSC(自民党ネットサポーターズクラブ、通称ネトサポ)を設立。その活動内容は、自民党の政策や方針などをネットに日々書き込むこととされるが、実態はネット上で他党のネガティブキャンペーンを行う“別働ステマ部隊”である。J-NSCの会員専用サイト内には掲示板があって、ここに自民党関係者が他党に関する情報を書き込み、ネトサポが拡散する仕組みになっていると言われている。本サイトでもその実態については何度か取り上げてきたが、ネトサポの多くがネット上で韓国や中国への悪罵を連ねるネトウヨだ。
これを踏まえると、Yahoo!ニュースの政治記事からめっきり退散したあの大量の安倍礼賛や野党デマは、やはりごく少数のネトサポたちの仕業だったのではないのか、との疑念が頭をもたげてくる。