秋元才加、ざわちんは偏見を恐れ、ルーツを明かすのを躊躇していた
こういった事情があるため、なかには自分のルーツを隠すべきどうか思い悩むケースもある。
フィリピン出身の母親同士の仲が良かったことから高安関と幼なじみであるとの報道が出たことも記憶に新しい元AKB48の秋元才加は、著書『ありのまま。』(徳間書店)のなかで、「デビュー当時は、ハーフってことを隠したほうがいいんじゃないかと言われたことがある」と記している。
現在はフィリピンの観光親善大使も務め、テレビ番組でフィリピンを案内するなど、自分のルーツについても積極的に語っている秋元だが、以前は「ハーフだから何がいけないの?」という思いを常に抱えていた一方で、「フィリピン人のハーフっていうと、“偏見”だったりというのもたまに。ほかの海外のハーフとはちょっと違うと思っていた」と感じていたと言う。小学校低学年のときに、「フィリピン人、フィリピン人」といじめられたこともあったそうだ。なので、心配した母親は、秋元がフィリピンで生まれたということを隠し、長い間「日本で生まれた」と話していたのだと言う。
ものまねメイクでおなじみのざわちんも、同じような葛藤を抱えていた。彼女は、2014年9月に放送された『中居正広の金曜日のスマたちへ』(TBS/現在は『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』に改題)で初めて母親がフィリピン人のハーフであることを告白したが、その際、日本の小学校で差別といじめを受けていたと明かし、色黒であることを理由に「ガングロ」「ヤマンバ」などといじめられた過去を語っている。
こういう現象を見ていると、やはりこの構図は、戦前の日本から続く同質幻想や純血主義がベースにあると考えられる。もちろん、本稿冒頭で紹介した城田優のように白人系のハーフで差別やいじめを受けている人も少なくないだろうし、芸能界などで白人系のハーフをチヤホヤしているのもまた、差別感情の裏返しに過ぎないと断じざるを得ないだろう。
前述のヘフェリン氏は、ハーフの問題を考えるとき、「日本人とは何か」が問われていると指摘する。
「片方の親が日本人で、日本語も話せ、和食や浴衣が好きで、国籍が日本、というふうに『血』『日本語能力』『国籍』『心』の面で、『日本人であること』をクリアしていても、顔が欧米人のようだと、『容姿』の壁が立ちはだかり、いつまで経っても『日本人』だと認められない」
「『日本人に見られたい』『自分は日本人』と思っているハーフにとっては、言葉、心や国籍の問題をクリアしていても、『アナタはココが『普通の日本人』とは違う』と指摘されてしまうことはつらい」
ご存知の通り、現在日本では「在日」「帰化人」などと出自や国籍をあげつらう言説や、外国に出自をもつ者に対し「イヤなら日本から出て行け」という罵声、ヘイトスピーチが平気で飛び交っている。
保守化がどんどん進み、排外的な考えが日本社会に広がりつつあるいま、城田が危惧しているように、出自をあげつらったいわれのない差別やいじめはこれからさらに増えていく可能性すらある。
多様な日本人も、日本人でない人も生きやすい社会にすべく、こうした差別に我々は異議の声をあげ続けていく必要があるだろう。
(新田 樹)
最終更新:2017.12.06 03:28