首相官邸ホームページより
このような言語道断の政治運営がまかり通っていいのか──きょうの参院本会議で、与党が「中間報告」をもち出し、共謀罪法案について法務委員会での採決を飛ばして本会議での強行採決に踏み切ろうとしている。この与党の態度は国民を見下した、権力の横暴そのものだ。
与党が振りかざしている「中間報告」とは、国会法56条の3に定められた、委員会審査を省略し本会議で採決できる手段だ。だが、中間報告は委員会での審査を骨抜きにするもので、みだりにもち出すことは避けられるべきもの。実際、安倍政権は、第一次政権時の2007年にも「天下り温存公認法」と呼ばれた公務員制度改革法案を中間報告によって委員会審査を飛ばして強行採決した“前科”があるが、その際は「あまりに横暴」と批判を浴び、結果、同年夏の参院選で与野党が逆転するほどに大敗した。
しかも、国会法の条文には、中間報告の条件として「緊急を要すると認めたとき」とはっきり示されているのである。
いま、「緊急」に法務委での共謀罪審議をやめて採決しなければならない理由など、ない。いや、共謀罪法案は担当大臣である金田勝年法相が「私の頭脳では対応できない」とまで言い出し、いまだにまともな答弁ができない状態にある。しかも、審議が進むにつれて一般市民が対象であることも明確になった。その上、政府は国連の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏からの質問にきちんとした返答さえしていない。「緊急を要する」どころか、「時間がまったく足りていない」のが現実ではないか。常識的に考えれば、批判・疑問・懸念・指摘だらけのこの法案は廃案が妥当、百歩譲っても継続審議にするべきものだ。
対する野党は、すでに松野博一文科相の不信任決議案を提出、その後も内閣不信任決議案を提出する予定で、徹底抗戦の構えを見せているが、一方の安倍政権は異例の中間報告をもち出すほどに「緊急で」一刻も早い強行採決を実施しようとしている。