茂木健一郎は「オワコン」発言の前に「森友をお笑いにできない」問題を指摘
この話で思い出すのが、まさに本稿冒頭で挙げた茂木氏のツイートだ。実は、炎上した「オワコン」発言の前にこんな前段があった。
〈トランプやバノンは無茶苦茶だが、SNLを始めとするレイトショーでコメディアンたちが徹底抗戦し、視聴者数もうなぎのぼりの様子に胸が熱くなる。一方、日本のお笑い芸人たちは、上下関係や空気を読んだ笑いに終止し、権力者に批評の目を向けた笑いは皆無。後者が支配する地上波テレビはオワコン。〉
〈日本の「お笑い芸人」のメジャーだとか、大物とか言われている人たちは、国際水準のコメディアンとはかけ離れているし、本当に「終わっている」。〉
〈最近の大阪の国有地をめぐるあれこれ、その学校法人のトンデモ教育方針、アメリカやイギリスだったらコメディアンの餌食になって、人々が自由かつ柔軟にものを考える上で大切なメタ認知を提供していることでしょう。日本のテレビにそのような文化がないのは国家的損失です。残念っ。〉
そう、茂木氏はまさに、森友をネタにしない日本のお笑いを批判し、その背景にテレビの体質があることを見抜いていたのである。日本においては、お笑い芸人が権力を揶揄した内容のネタを板の上に乗せたいと考えたとして、劇場などライブの場では問題なかったとしても、テレビの舞台ではそういったネタを演じることは決して許されないという構造が間違いなく存在する。
ザ・ニュースペーパーは強い社会風刺を入れ込んだ時事ネタをアイデンティティとしているグループであり、彼らはこんなことでは活動方針を変えたりはしないだろうが、そこまで強いスタンスでやっているわけではないお笑い芸人であれば、一度こういったことを経験したら、そのあとは必ず「自主規制」するようになる。言うまでもなく、一部の超大御所を除けば、芸人よりも制作サイドのほうが力が強く、「干される」恐怖が頭をもたげるからだ。
そして、もうひとつ驚きなのが、こういった事例は普通のバラエティー番組だけでなく討論番組でも同様で、しかも、発言の主がたとえ北野武であったとしても起こり得るということだ。
今月14日、まだ騒動の熱も冷めきらないなか過中の茂木氏が『しくじり先生 俺みたいになるな!!』(テレビ朝日)に出演し炎上騒動の顛末について語ったのだが、そのなかで東国原英夫がこんな裏事情を暴露していたのだ。なんと、『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日)のような政治討論バラエティ番組ですら権力を揶揄するような発言は大量にカットされていると言うのである。
「日本のお笑いも政治とかそういったものを揶揄したりするのはみんなチャレンジしてますよ。(ビート)たけしさんの収録来られたことありますか? 『TVタックル』、一回来てください。ほとんど使われてないですけども、全部カットですけども、相当チャレンジされてますよ」