――たしかに、今回の西中さんへのバッシングも明らかに安倍政権支持者とネトウヨが中心になっています。
政治や行政による無作為や差別政策により深刻な人権侵害が生まれているにも関わらず、それを利用する形で民間のヘイトスピーチや、被害者へのバッシングが横行するという傾向が、この10数年強まっているのではないでしょうか。そして国の政策を批判すると「売国奴」とか「反日極左」というレッテル貼りがはじまる。私個人は好きでやっているだけなので何と呼ばれても構いませんが、苦しい状態に追いつめられた被害者をさらに貶め、傷つけるような風潮は許せません。
ですから、やむにやまれず「自主避難」されている原発事故被害者に対して、「自己責任」であるとか「放射脳」であるとか、帰還を強要するような風潮は絶対に止めるべきだと思います。国の政策により被害状況が深刻になっている人たちがいる。その上に新たな誹謗中傷が生じていることは確かでしょう。そのような感情が、政権、閣僚の中にも蔓延しているように思います。
今回の今村大臣の発言にしても、国や福島県が避難当事者の意見も聞かずに一方的に住宅無償提供の打ち切りを決めたにも関わらず、その路線に従わないのはけしからん、という本音が出たのだと思います。あれだけ感情が露になったのには驚きましたが、あれが素直な気持ちなのだと思います。
安倍政権全体がそうですよね。安倍首相自身、批判的な意見に対しては感情的に食ってかかる。「気分のナショナリズム」とでも言うのでしょうか。しかし、そのような気分や身勝手な信念で押しつぶされるのが人権であり、人々の暮らしです。そして政権は不都合な事実を隠すことしか考えていない。ですから原発事故による避難者の存在じたいが、「復興の加速化」を標榜する現政権にとって不都合な存在なのでしょう。
しかし震災から6年たっても、福島第一原発事故は収束していないし、低線量被ばくや内部被ばくの心配をしながら、福島県内で暮らしている多くの人々や、やむにやまれず避難生活を日本各地で続けている人々がいる。そのような“現実”に、これからも向き合っていかなければならないと思います。
(インタビュー・構成 編集部)
西中誠一郎
1964年東京都生まれ ジャーナリスト。入管難民問題や外国人労働者問題、治安テロ対策と監視管理社会化、戦後補償問題などをテーマに活動。「週刊金曜日」(金曜日)や「世界」(岩波書店)などに寄稿。共著に『国家と情報――警視庁公安部「イスラム捜査」流出資料を読む』(現代書館)などがある。
(編集部)
最終更新:2017.11.22 01:42