つまり、06年教基法は、安倍首相が国家に忠誠を誓う人間像を求め、それを教育の名のもとに強制したいという願望を直裁的に表したものだった。さしずめ、「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」(国家のために勇気をもって身命を捧げ、永遠に続く天皇の勢威を支えよ)とする教育勅語の現代版である。実際、06年教基法は、第一次安倍政権の数少ない「成果」として極右陣営から絶賛された。たとえば当時の日本会議会長・三好達氏は「正論」(産経新聞社)07年11月号のインタビューで、「(教基法改正は)日本会議の十年の運動の中で最大の成果」と最大級に評価したうえで、「教基法改正は改憲の世論形成のためだ」と明言していた。
その意味でも、この度森友学園の町浪新理事長が示した「教育勅語の暗唱」等の異常な極右洗脳教育が安倍政権の教育方針を実直に反映したものであるとの認識は、たしかにその通りだとしか言いようがない。声明文で“安倍政権の教育方針”との決別を宣言した森友学園が、今後、具体的にどのような活動を行っていくのかはまだ定かではないが、本サイトが「安倍政権の下で日本が“森友学園化”する」という危険性を繰り返し指摘してきたように、今回の一件で浮き彫りになった極右教育の問題は、やはり、全体の氷山の一角にすぎないのである。
事実、安倍政権は3月31日、教育勅語を学校教育で扱うことに対し、「憲法や教育基本法に反しないような形で教材として用いることまでは否定されない」との答弁書を閣議決定した。これまでにも下村博文元文科相や稲田朋美防衛相、そして安倍首相自身が教育勅語を肯定する発言をしてきたが、今後一層、安倍政権による極右洗脳教育が加速していくということだろう。
先日本サイトでも取り上げた道徳教科書検定で「パン屋」が「和菓子屋」に変更させられた件もそうだが、こうした思想信条の侵犯・洗脳問題は、わたしたちが「これはおかしい」と気がついた頃には、すでに末期段階に突入しているのである。安倍政権が推し進める“戦前のメンタリティ”の醸成に抵抗するためには、いま、この瞬間に声を大にしなければならない。
(宮島みつや)
最終更新:2017.11.22 01:21