これは、当時の「サンケイ新聞」1976年6月23日付に掲載された、連載記事「蔣介石秘録」第497回のなかにある記述だ。74年から76年まで計666回にわたって長期連載されたシリーズで、のちに同名で書籍化、サンケイ新聞社(当時)から刊行されている。執筆したのは産経新聞論説副委員長もつとめた古屋奎二氏だ。
おいおい、誰がどう見ても、「犠牲者は三十万人とも四十万人ともいわれ」とはっきり書いてあるではないか。
ようするに産経は、「40万人なんて嘘だ!」と叫ぶネトウヨに便乗して、南京事件自体をなかったことにしたいのが見え見えだが、実際には『騎士団長殺し』に出てくる「四十万人というものもいれば」と、まったく同じことを自分たちで言っていたのである。それを頰かむりして〈「根拠を示して」といった書き込みが相次いだ〉とは、白々しいにもほどがある。
繰り返すが、本サイトは南京事件と呼ばれる日本軍の戦争犯罪について、その犠牲者数の多寡は本質的な問題ではないと考えている。ただ、こうして産経が、「“虐殺○○人説”は中国のプロパガンダだから南京事件はなかった!」などと何度でも同じ手口を振りかざすのならば、こちらもその都度産経の報道を振り返ってやらねばならないだろう。なにより、いまの産経新聞が安倍政権や極右歴史修正主義の広報紙となっている事実を、善良な読者に周知させるためにもだ。
それからもうひとつ、最近の産経ニュースは、安倍首相を野党が追及したときに「民進党にブーメラン」「見事なブーメラン」「ブーメラン現象」「2日連続のブーメランを被弾」などとやたら連呼している(西城秀樹か!?)。これは、相手に投げかけた追及や批判が自分に戻ってくることを比喩したスラングだが、少なくとも産経新聞にそんなことを言う資格は、これっぽっちもない。そう最後に念を押しておきたい。
(宮島みつや)
最終更新:2017.11.21 03:50