〈このプロジェクトのコンセプトはずばり、“アイドルをつくるアイドル”というものだ。具体的には、「歌って踊るメンバー」として所属するだけでなく、たとえば、メンバーの一部には「プロデューサー候補生」としてもガンガン運営に参画してもらう。そして、将来的には独立し、新たなグループを立ち上げてもらう。(中略)それぞれのメンバーが独立したあかつきには、もちろん、新グループの経営者として然るべきお金が本人の懐に入るようにする〉
〈なぜ、そんなネットワークをつくろうとしているのか。理由は運営側による中間搾取を、なるべくゼロに近づけたいからだ。「少女たちが“悪い大人”に“やりがい搾取”されている」というブラックなイメージは、アイドル業界にどうしてもついてまわる。「ステージに立ちたい」「雑誌の表紙を飾りたい」など、憧れの舞台のためには低賃金でも重労働でも“我慢するアイドルの健気さ”につけこむ人びとがいる。実際、そうした「クソ運営」も密かに存在しているのだろうけど、僕は「クソ運営」を払拭し、「搾取されないアイドル」を実現したい〉
〈なぜそこまでするのか。僕は、本当にアイドルを「素晴らしいもの」と考えているからだ。その世界を、未来永劫サステナブル(持続可能)な形で残したい〉
〈いまこの社会は寛容さを失い、リベラルな価値観が衰退していく一方である。そんな中、僕はアイドルこそが、「自由」(リベラル)にとっての最後の希望だと、大マジで信じている〉
番組の最後で濱野と対談した宇野常寛もまた、彼に対してこのように語りかけていた。
「僕がね、いち仕事仲間として、あと友人として、いち読者として付け加えることがあるのだとすれば、いまのインターネット社会に蔓延している“世間の空気”のようなものに対して謝罪すると、それが本人にとって必要だと思うのなら、僕がそれに対して口を挟む権利はないと思う。ただ、『それで禊は済みました。終わりです』ということではなくて、ここからもち帰ったものをかたちにした“仕事”を発表してもらうことが、言葉を選ばなくてはいけないけれど、嬉しいかなと思います。(中略)そのときにもアイドルそのものについて言及する必要はないと思う。それは失敗だったかもしれないけれど、PIPという構想があがったときの問題提起というのは非常に正しかったと思うんですね」
社会学者・批評家として濱野智史はPIPの経験を本当の意味で総括することはできるのか。その仕事を貫徹させることが、PIPの活動を通して傷つけてしまったメンバーやスタッフに対する、何よりの謝罪となるのだろう。
(新田 樹)
最終更新:2017.02.17 06:10