そもそも長谷川氏といえば、フジテレビのアナウンサー時代である2012年にニューヨーク赴任中の経費の不正使用が発覚したことで降格処分となり、翌年に退社すると翌日から内部批判のブログを開始。自身の潔白を訴える一方で、週刊誌などで女子アナたちの暴露話を披露することで注目を集めた人物。自著『いつも一言多いあのアナウンサーのちょっとめったに聞けない話』(小学館)でも本人自ら明かしているように、局アナ時代には「こいつなんてね、おっぱい四天王だ、四天王!」「もーこの女子アナなんて、脚だけ見てくれればいいんです!」などと発言し、ネット上では「セクハラがひどすぎる」と話題になったこともあるほどで、その下品さはお墨付きだった。
そうした長谷川氏が、女子アナの暴露話から社会問題へ踏み込むようになり、暴論であればあるほど“炎上”してネットニュースに取り上げられるという状態になった。しかし、これはビジネス上の“炎上芸”では決してないだろう。それは前述したように、長谷川氏は一貫して新自由主義者らしい弱者叩きに邁進してきたからだ。
そして、ここで浮き彫りになったのは、維新のスタンスだ。この差別性に溢れ、かつ弱者叩きの言説を発信してきた長谷川氏を、よりにもよって維新の幹部は「維新の政策と長谷川氏の主張は近い」(産経ニュースより)などと語り、擁立することを決めたのである。
それはたしかにそうだろう。長谷川氏は女性蔑視かつ人工透析患者をはじめとして弱者への差別を厭わないが、橋下徹氏は「慰安婦制度は必要なのは誰だってわかる」と言ったり、昨年、沖縄県うるま市で女性強姦殺人事件が起こった際も、過去の“風俗の活用”発言を「撤回しない方がよかったかも」などとツイッターに投稿したりと、女性の人権などまるで無視。維新代表で大阪府知事の松井一郎氏も、「土人」発言をおこなった大阪府警の警官に批判が集まるなか、「出張ご苦労様」と差別を肯定するかのように労ってみせたほどだ。
こうした言動にくわえて、改革という名のもとに弱者を切り捨ててきた維新の新自由主義政策と、長谷川氏の主張の親和性。──知名度だけではなく、維新が長谷川氏のそうした部分を買ったのは間違いない。
維新が長谷川氏を擁立するという動きによって、あらためてよくわかったこと。それは維新が「差別OK、弱者叩きごもっとも」な政党だということだ。橋下氏はいわばトランプの先駆者だが、長谷川氏のような人物を担ぎ出すというのは、今後はさらに過激な言動で大衆を煽動する反知性的な政治を展開していく、そのことの表明なのだろう。
(編集部)
最終更新:2017.11.16 12:14