それは百合以外のキャラクターにも言えることであり、第7話に登場した、「沼田さんって鋭い方だと思っていました。男性と女性のどっちの視点ももっているから」といった平匡に対して周囲の人間が「違うと思いますよ。沼田さんはただ、沼田さんなんですよ」と返すシーンもまさしくそういった物語の根幹のテーマに触れるシーンである。風見が自分の容姿ゆえに誤解されがちなことに悩むくだりも、人をレッテル貼りして分かった気になるのではなく、その人自身を理解するよう努めてコミュニケーションすることの大切さを見る人に伝えている。
実は、以前にも星野源はこのドラマの伝えるメッセージを、人に対する安易なレッテル貼りへのアンチテーゼであるという旨を語ったことがある。それは、先月28日深夜放送『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)でのことだった。
このラジオがオンエアーされる直前はちょうどドラマの7話を放送している時期だった。その7話は、みくりが平匡に抱きつきながら「いいですよ、そういうことしても。平匡さんとなら」と思い切った告白をするも、平匡は自分に女性経験がないことを彼女に知られることを恐れ「無理です。そういうことをしたいんではありません。ごめんなさい、無理です」と拒絶したことで大きな話題を巻き起こした回だ。
それを受けて、番組にはリスナーから平匡に対してこんなお叱りの感想メールが大量に届いたという。
〈7話の最後のシーンはもう。平匡さんのバカ〉
〈世間では『平匡なにしてんだ!』という意見と、『みくり早まったな』という意見と二択に別れております。源さんの意見を是非お聞かせ願いたいです〉
ただ、これを読んで星野は重要な指摘をする。メールの「男だったらこういうとき逃げちゃダメだ」という意見は、「男ならこうすべき、女だったらこうあるべし」的な性別によるレッテル貼りの行為だとして、物語の登場人物たちはそういうレッテル貼りにこそ苦しめられているのではないかと看破したのだ。
「平匡が拒否するというエンディングになったときに、やっぱりみんな怒っている怒り方が、メールとかを見ていると、『男なのに何やってんだ! 女性から申し込まれたそういう誘いを男がなぜ断るか?』って怒っているんだけど、それって、平匡なり、みくりなりがずっと苦しんできた“男に生まれたから”っていうレッテル、“女に生まれたから”っていうレッテル。そういうものとまったく一緒なんですよね」