こうした事態に、一部でワイドショーに対する批判も巻き起こったが、しかし『スッキリ!!』(日本テレビ)の加藤浩次は「ああいう犯罪に手を染めてる人間だから、レコーダーを公開したってもいいんだ」と嘯いた。
また『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)では、ASKAが芸能レポーターの井上公造に送っていた未発表曲のデモテープを許可なく放送。番組終了後には、その井上に逮捕約5時間前のASKAの携帯電話に直接連絡させ、引き継いだ宮根誠司が巧妙に話を聞き出し、それをそのまま翌日29日の放送で「独占スクープ ASKA容疑者逮捕直前の激白」と題して流した。
これら一連の報道は警察と、それに無批判に乗っかるマスコミの危うい体質を浮き彫りにしたものであり、薬物依存に対して間違えた認識を植え付けるものだ。
これもまた本サイトで度々指摘していることだが、薬物依存症は欧米ではすでに犯罪ではなく病気として対応するのが主流になってきている。そしてASKAがこれまでブログなどで主張してきた、盗聴・盗撮集団や秘密結社によるストーカー被害などの言動のおかしさは、薬に起因する疾患、あるいは持病の併発の可能性が高い。
しかし、ワイドショーは覚せい剤依存を「重大犯罪」のようにただひたすら糾弾し、異物として排除しようとする。さらに依存に苦しむASKAをおもちゃのようにイジり、見世物にして、嘲笑する。これはASKAだけでなく、すべての薬物依存者にとって更生を阻害するもので、また社会にとって害悪とさえいえる。
おそらく明日のワイドショーは朝からASKA不起訴を大々的に報じるだろう。しかしその内容は、自身のこれまでのデタラメ報道を反省するものではなく、「誤認逮捕とは思っていない」という警視庁の言い訳を批判することなく垂れ流すものになるはずだ。そして「尿をすりかえた」「わざと微量しか尿を提出しなかった」などとさらにASKAを攻撃することで、言い訳に始終するにちがいない。
いまさらこの国のワイドショーに期待などするつもりはないが、それにしても権力にへつらい、本質を歪め、弱者を叩くその姿勢は、うんざりするばかりだ。
(伊勢崎馨)
最終更新:2017.11.12 03:44