4月16日に開かれた新党大地の総会でスピーチする鈴木宗男氏
経済協力先行で肝心の北方領土交渉の具体的進展がなかった日露首脳会談――。NHKなど大メディアは、“安倍外交”の完全敗北をまるで成果があったかのように偽装する大本営発表に終始したが、それでも自民党内から「国民の大半はがっかりしている」(二階俊博幹事長)という否定的発言が出るほど。地元・山口県長門市での“温泉会談”で最上級のもてなしをして、日露経済協力のお土産も渡したのに、2時間以上遅刻のプーチン大統領に「領土問題はゼロ回答」で押し切られた。
元経産官僚の古賀茂明氏は、首脳会談前から“惨敗”を予測していた。筆者の取材に対し古賀氏はこうコメントしている。
「ロシア側に『解散狙い』と手の内をばらした時点でダメです。『安倍政権が北方領土返還を総選挙の目玉にするのなら、思いっきり要求レベルを上げて金を引き出そう』とロシア側は考えるからです」
プーチンとの会談に同席したこともある民進党の鉢呂吉雄参院議員(「日露友好議員連盟」事務局長)も、「抽象的文言の羅列に止まる」「経済協力が先行する可能性は高い」と断言、日露首脳会談の結末をズバリ言い当てていた。
「メディアは“2島返還ムード”を盛り上げていますが、日露の事務ベースで返還交渉が進展しているようには見えません。逆にロシア側は『北方領土は第二次世界大戦で勝ち取ったもので決着済』と以前より強く主張、明らかに後退しています。日露議連で世耕弘成・経産大臣(ロシア経済分野協力担当大臣を兼務)に話を聞きましたが、『領土問題と日露経済協力は切り離している』と強調していました」(鉢呂氏談)
ロシアにジャパン・マネーを差し出すだけの“売国奴的交渉”を安倍首相がやらかしたのは、相手に足元を見られる最低レベルの外交交渉術と、情報分析能力の欠如が原因なのではないか。耳障りのいい楽観的情報ばかりを鵜呑みにして、「プーチン大統領は2島先行返還を決断する寸前で、あと一押しすれば、歴史的偉業を達成できる」と思い込んだようにみえてしまうのだ。